カレッジマネジメント225号
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9リクルート カレッジマネジメント225 / Nov. - Dec. 2020特集コロナ禍と2020年の進路選択Part 1 高校の今と進路選択くなって、初めて見えてくることもありますよね。「学びを止めるな」という言葉が飛び交いましたが、「そもそもコロナ前から学びは動いていたのか」と自問したという声も聞こえてきました。和田 私は、「学びを止めてはいけない」のは、むしろ教員のほうではないかと思いました。時代に合わせて教員もアップデートしていくことは必要不可欠です。とりわけベテラン教員は、新しいことに苦手意識が強い傾向にあります。実際、オンライン授業でも、ぱっと飛びつく若手に比べて、ベテランは時間がかかります。でも、最終的にはものすごく良い授業コンテンツを作るのは、むしろベテランのほうでした。山下 長年培ってきた授業観が生きてくるのですね。和田 一斉休校中、徐々に全国の先生方から「こんなふうに授業を工夫してみたらうまくいった」等、様々な報告が届くようになりました。多くの先生方が新しいツールで何ができるのか、どうすれば効果的か等、非常によく学んでいたのです。そうやって頑張っている先生達の姿を見ることが、生徒にとっては一番の教育ではないでしょうか。私もこの夏休みに「Apple Teacher」の資格を取りました。「教師であるからには学び続けること」と思って取り組んでいます。今こそ先生達の学びどきなのです。小林 コロナの影響で進路指導も例年通りにはいかないと思いますが、どのように行っているのでしょうか。和田 先が見えず不安になる状況だからこそ、前向きな姿勢での進路指導を心掛けています。私が生徒に伝えたのは、まずコロナ禍にあるという現実を受け止めなくてはならないこと。そして、この危機を逆にチャンスと捉えようということです。学校行事が減った分、自分の時間が増えているので、学習時間にあてることもできます。どれだけ自学できたかによって、大逆転も起こりえます。さらに、入試のシステムの変わり目は安定志向に流れやすいため、今年だからこそ起こせる奇跡があると思っています。大学が求めているのも、そうした危機をプラスに転じられる「変化対応力」のある人材ではないでしょうか。山下 コロナ禍に『キャリアガイダンス』の取材を行うなかで、しなやかな「対応力」のある高校生にたくさん出会いました。休校中、自らマスクを作って困っている人に配布したり、医療従事者の皆さんに対して病院の壁にプロジェクションマッピングでエールを送ったり…。彼らは未曾有の体験をするなかで何かしら強く感じることがあって、その思いが行動につながったのだと思います。予定されていた学校行事がなくなり、部活動で目標にしてきた大会や発表会が中止になるなかで、生徒達は何を考え、どんな思いで行動したのか。その経験から学んだことを、進学先の大学でどう形にしていこうと思っているのか。各大学には、入学者選抜において成績や活動結果だけでなく、そこに至る思いやプロセスまで見て評価して頂けることを強く期待しています。小林 高校生の進学先選びの進め方にも大きな影響が出ていると思います。大学進学者の9割超が参加するオープンキャンパスも、今年はWeb上の開催に切り替えざるを得ませんでした。その内容の充実度に差があるなか、高校生の期待に応えられているでしょうか。和田 生徒達は、インターネットの情報はよく見ているという感触があります。ただ、一方的なガイダンスだけのWebオープンキャンパスでは、物足りないかもしれません。例えば、1対1で質問できるオンライン個別相談のような場があると、生徒それぞれの不安が解消できるので非常にありがたいです。そこで親身になって丁寧学んでいる教員の姿が、一番の教育に親身な個別対応が、高校生の学校選択を左右「自学力で大逆転もあり得る」と指導コロナ禍で求めたい大学のコミュニケーション

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