カレッジマネジメント226号
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16リクルート カレッジマネジメント226 / Jan. - Feb. 2021には顕著な違いが認められないが、私立大学に限ると規模により、回答に差が生じている。「業務に必要な知識」、「業務を効果的・効率的に進める力」では、規模が大きくなるほど、個人間の差があまり大きくないとの回答割合が増している。大きな母集団から部課長が選抜されることや学内における育成環境が比較的整っていることにより、知識やスキルのばらつきが一定程度抑えられていると考えることができる。その一方で、「固定観念にとらわれない柔軟な発想」、「新たな課題を発見し、挑戦する姿勢」、「他部署と連携し、調整する力」では、規模が大きくなるほど、個人間の差が大きいとする割合が増している。学内外の研修や自己啓発を促すことで知識やスキルの水準を引き上げることはできるが、発想や姿勢の転換を促すことは容易ではない。ミドル育成の大きな課題である(表11)。これらの能力をどう育成すればよいのであろうか。本調査では、最初に職員の人材育成施策の現状に対する評価を、理事・事務局長、部課長、中堅・若手職員の3階層に分けて問うた後、部課長層に絞って、職務遂行能力を高めるためにいかなる育成施策が必要かを尋ねた。人的資源管理(Human Resource Management)の分野において、能力開発の方法として挙げられるのは、通常、OJT(On the Job Training)、O-JT(O-the Job Training)、自己啓発の3つである。ここでは、OJTを、実務を通した教育を意味する狭義のOJTとジョブ・ローテーションに分け、O-JTを、学内外を合わせた研修とし、さらに成長を促すという観点から評価システムを加えた5つの施策に整理し、それぞれの整備状況について認識を尋ねた。「整っている」、「ある程度整っている」を合わせた肯定的な認識の割合が大きい順に、OJT(64.4%)、研修(62.7%)、評価システム(57.4%)、ジョブ・ローテーション(46.4%)、自己啓発支援(44.2%)となっている(図16)。設置形態別にみると、OJT、ジョブ・ローテーション、評価システムについては、肯定的な認識の割合が、国立、公立、私立の順となっている。また、私立大学の規模別でみると、OJT、ジョブ・ローテーション、研修、自己啓発支援の4施策では、規模が大きいほど肯定的な認識の割合が高いとの結果が得られている。私立より国立、同じ私立でも中小規模校より大規模校の方が、OJTやジョブ・ローテーション等を通した育成が行いやすい環境にあることは想像に難くない。先にみた「部課長層は部や課が機能を発揮できるよう期待した役割を果たしている」の質ある程度大きいとても大きいあまり大きくないほとんどないコミュニケーション能力他部署と連携し、調整する力部下を育て、その能力を引き出す力業務を効果的・効率的に進める力企画・構想力新たな課題を発見し、挑戦する姿勢固定観念にとらわれない柔軟な発想幅広い視野業務に必要な知識(%)18.818.422.927.528.315.217.914.812.246.837.83.250.731.82.747.533.60.946.634.53.648.023.30.447.324.80.552.524.20.457.422.41.845.331.84.0図15 【個人間の差】部課長層の職務遂行能力に対する現状評価「部課長層の職務遂行能力について個人間の差をどう評価しているか」大規模校ほど育成環境は整う傾向にあるが、中小規模校にも育成上の利点はある職員の育成に関する現状と課題

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