19リクルート カレッジマネジメント226 / Jan. - Feb. 2021中央教育審議会答申を過去に遡って読み返してみると、1960年代から学内管理体制の確立という表現で、今日でいうガバナンスの問題が論じられていたことが分かる。時代は下って1991年の大学設置基準の大綱化を契機として大学改革の必要性が強調されるようになり、さらに近年、国や社会からの改革に向けた圧力は増し、大学も急き立てられるように「改革」に取り組んでいる。このような現状に疑問を抱く大学関係者は少なくない。そのなかにはどのような改革でも見られる変革への抵抗もあるだろうが、外装を変えることに終始しがちの形だけの改革に対する疑問や危惧もあるだろう。改革の目的や方法を問い直す必要がある。教員と並ぶ改革の担い手である職員についても同様である。教職協働を謳い、SD(Sta Development)を義務化し、人事評価システムを導入したからといって、職員組織が活性化し、職務遂行能力が高まる訳ではない。組織において人は、仕事の経験を通して、上司・同僚の支援・助言を受けて、研修を通して学習し、成長するといわれている。このことだけを考えても、トップの方針を業務に展開し、具体的な課題として配下の職員に賦与する部課長の役割は極めて重要である。節目節目で適切な助言や支援を行うことも大切だし、働きがいがあり働きやすい環境を整えるこ明確にしたうえで、評価を適切に行う等、業務運営や人事管理の面でこれまで以上に工夫を行う必要がある。加えて、視野の拡大やネットワークの形成等を目的として学外研修の場を積極的に活用することも重要である。また、中堅・若手職員の育成は、将来の部課長人材を育てることでもある。リーダーシップ研究の領域では、20代から30代にかけてリスクを背負い、成功と失敗から学習する機会を持たせることが大事とされている。いわゆる「一皮むける経験」である。リーダー育成に成果をあげている世界のエクセレント・カンパニーでは、比較的若い社員たちにやりがいのある仕事を用意することを重視しているという(ジョンP.コッター『リーダーシップ論』DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部+黒田由貴子+有賀裕子訳、ダイヤモンド社、2012)。大学と企業では目的も組織特性も大きく異なるが、どうすれば構成員の能力が高まり、組織目的に対するより大きな貢献を引き出しうるか、そのことをより深く突き詰めて考える必要がある。今回の学長調査がその契機になることを願いたい。本調査結果の集計・分析にあたり、元東北大学大学教育支援センターPDコーディネーターの和田由里恵氏に図表作成をはじめ多大な協力をいただいた。感謝の意を込めてそのことを記したい。とも部課長の役目である。筆者の実務経験を通して企業と大学を比べると、企業ならば部課長レベルで解決できたり調整できたりする業務を、大学では理事長や学長等トップマネジメントレベルで調整していることが少なくない。トップの方針を第一線に伝え、第一線の情報をトップにつなぐだけならばミドルは不要になる。また、変革が進まない原因の一つにミドルの存在を挙げる見方もある。冒頭で紹介した野中・竹内両氏が提唱した「ミドル・アップダウン」は、欧米を中心に広がりつつあったミドル不要論に警鐘を鳴らし、ミドル固有の役割を再認識させることを企図したものである。大学においても、部課長が部や課の単位で仕事を振り分け、管理・監督するだけならば、人件費に見合うだけの存在か厳しく見直しを行うべきであろう。しかしながら、学長は部課長の役割をそのように限定的に捉えていない。現状において不十分(やや不十分と全く不十分を合わせたもの)とする割合が大きい順に、「固定観念にとらわれない柔軟な発想」、「新たな課題を発見し、挑戦する姿勢」、「企画・構想力」となっている結果が示すとおり、学長は部課長に変革を主導することを期待しているのである。そして、変革を主導するミドルを育てあげるためには、目標や課題を特集 大学経営を支えるミドルマネジメントResearch result調査データミドル固有の役割を再確認する必要がある変革を主導するミドルを育てるためにも、若い職員にやりがいのある仕事を用意する
元のページ ../index.html#19