カレッジマネジメント226号
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技術革新により、産業構造や働き方が劇的に変化することが予想されます。本連載では、領域×Technology=「X Tech(クロス・テック)」に着目し、産業の大きな変化の兆しを捉えていきます。取材協力清水耕平氏 株式会社富士経済 エネルギーシステム事業部 第二部 第一課 主任串 晃伸氏 株式会社富士経済 エネルギーシステム事業部 第二部 第二課 主任#11 EnergyTech(エネルギーとテクノロジー)省力化・自由化・デジタル化でエネルギー関連ビジネス市場が急成長で変わる産業日本のエネルギー業界は今、変化の時代を迎えている。菅首相が2050年までに二酸化炭素(CO2)等の温室効果ガス排出量を実質ゼロとし、脱炭素社会を目指すという目標を示したことで、再生可能エネルギーへのシフト、電力・ガス市場の自由化、IoT・AI・ブロックチェーン・5G等を活用したデジタル化が進み、エネルギー関連ビジネス市場が急成長しているのだ。SDGsやESG投資に取り組む企業も増加している。エネルギー関連市場に詳しい富士経済は、2019年度実績では1兆4499億円の市場であるが、2030年度には2兆6366億円まで拡大すると予測する。「特に注目したいのは、太陽光発電システムなどの需要家が持つエネルギーリソースを用いた取引の拡大や、設備の遠隔監視等エネルギーデータを活用した省力化ビジネス。これまでメインプレイヤーだった電力・ガス会社に加え、IT/通信・自動車・製造業・物流・金融業界といった幅広い業界の企業が参入しています」(串氏)各世帯のエネルギー使用量、利用する時間帯、顧客情報等のビッグデータからライフスタイルを分析して最適なサービスを提供するビジネスが、多様な業界で展開されつつある。一方で、このエネルギー関連ビジネスの自由化やデジタル化には、電力の取引やデータの取り扱いに関するルール整備という大きな壁もある。例えば、一般家庭のスマートメーターから得られる電力使用量や使用時間帯等のデータには個人情報や生活情報も含まれるため、こうしたデータを様々な用途に利用するためのルールが必要となる。だが、こういった法制度やルールが整備されれば、この先20年、30年先にはさらなる市場の成長が見込めるだろう。エネルギー関連ビジネスには電力データを分析するスキルや情報工学に加え、電気のインフラを理解し提案できる電気工学の知識を持つ人材も重要だという。「エネルギーの特性を知ったうえで、社会インフラへの貢献やユーザーの利便性を考えられる人が有能な人材として求められます」(清水氏)保守的でレガシーなエネルギー業界に変革を促し、全ての業界に新しい価値を生み出すには、複数の専門知識やスキルの組み合わせが必要になると串氏も強調する。エネルギービジネスの基軸を根本的に変え、生活インフラから人々の豊かな生活に貢献する「未来」を創る人材育成に期待が高まる。(文/馬場美由紀)エネルギー関連ビジネス市場出典:株式会社富士経済「2020 エネルギーマネジメントシステム関連市場実態総調査」 「エネルギーデジタルビジネス市場の現状と将来展望 2020」0500010000150002000025000300002030年度予測2025年度予測2021年度予測2020年度見込2019年度(億円)14499億円15606億円15708億円20305億円26366億円エネルギーデジタル関連サービス市場EMS関連機器・設備市場EMS関連システム・サービス市場

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