カレッジマネジメント226号
32/54

32リクルート カレッジマネジメント226 / Jan. - Feb. 2021以降(2職場目以降)の職員が想定されていることだ。つまり、育成型人事制度は、いかに有能なミドルを育てるのかといったことに主眼が置かれたものだと言ってよい。新制度の最大の特徴は、法人全体の共通素養を育てようとしていることにある。森島理事長は「もちろん各大学、各部課での研修もありますが、この制度を導入したのは、法人全体の職員に共通する力量をつけてほしいと考えたからです。立命館では法人全体での人事異動が行われます。京都(立命館大学)に勤務していた職員が、北海道江別市(立命館慶祥中学校・高等学校)に異動したり、大分県別府市(立命館アジア太平洋大学)に異動したりする。どの学校にいようが、どの組織にいようが、立命館の職員であれば、こうした基礎的力量をつけておいてほしい」と言う。しかし考えてみれば、共通素養なるものを抽出するのは決して容易ではないはずだ。その点を尋ねたところ、「それはやはり、大学行政研究・研修センターあってのことです。センターで議論してきたことをブラッシュアップした、と表現すればよいでしょうか。10年の蓄積の賜物です」と森島理事長は笑顔で言う。育成型人事制度は、大学行政研究・研修センターという土台あってのものなのである。ただ同時に断っておくべきは、共通素養を大事にしているとはいえ、立命館が新しい制度を設けてまで育成したいと考えている職員は、決してジェネラリストではないということだ。強く念頭に置かれているのは、むしろ「専門型人材」の育成である。グローバル化が進み、学術は高度化し、社会が寄せる大学教育に対する期待は高まっている。厳しい時代になりつつあるなか、教員にはできるだけ多くの時間を研究と教育に充ててほしい。だからこそ、職員は大学行政のプロフェッショナルになる必要がある。イメージとしては米国のライブラリアンが近いかもしれない。大学図書館の専門的業務を担うライブラリアンは、あくまでライブラリアンとしてスキルアップしていく。数年の仕事経験の先に研究部や教務部に異動するということはない。あえて職を変えることがあるとすれば、ライブラリアンとして条件の良い他大学へ移るといった類であろう。米国の大学と日本の大学とは文脈が大きく異なるが、少なくとも専門性という観点からすれば、立命館が向かっているのは、こうした方向性だ。職員業務も多様化・複雑化している。大学経営上の職務の暗黙知を形式知化図3 職員ライフコース期ごとの成長・育成目標目指すは専門型人材の育成部課共通的役割導入研修期ひとり立ち期中核職員期熟達期0~1年目1~5年目3~7年目6年目以降0~1職場目1~2職場目1~2職場目2職場目~① 私学立命館で働く立命人として、その特長を活かし、継承する。・立命館スタイルとその他の比較、客観的視点分析ができる・教職協働の課題対処ができる・改革志向をもって事案に臨む・私学立命館の特長を 知り、それを継承 する② 目標に向かい、他者と協働し、担当のチームを的確に目的達成に導く。・全学を意識した業務 姿勢を形成する・なにが問題/課題か を理解し、自身の周囲から発見・吟味できる・問題/課題解決、業務改善ができる・内的キャリアの自己理解ができる・チームを目標達成に 導く③ 後輩や同僚への指導、助言を通じ、自身の知識・技能を確立し、それを継承する。・業務にスムーズに 馴染む・自身の業務に責任を持ち自律的に業務遂行できる・周囲の協力を得て課題達成する・後輩指導と知識・技能を継承する

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る