カレッジマネジメント226号
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35た大学のウェブサイトを見ると、様々なステークホルダーを対象に、毎年度「TSR総合調査」を実施し、運営ビジョンやそれを基にした取り組みがステークホルダーの期待に応えているか、満足感を与えているかを丁寧に検証しながらマスタープランが進められている。 大正大学のウェブサイトには、「大正大学職員のあるべき姿」が示されている。こうした目指すべき姿を文章として提示している大学は少なく、なぜこうしたものを作成したのかを尋ねてみた。 大正大学の建学の理念は「智慧と慈悲の実践」であり、仏教用語の慈悲、自灯明、中道、共生という4つのキーワードに合わせて、「4つの人となる」という教育ビジョンを学生に示している(表1)。だが、なってほしい学生像が必ずしも教職員に十分浸透していないと学長は話す。教育ビジョンが教職員に浸透して同じ認識を持っていなければ、実現されることはないという問題意識から、同じキーワードで職員のあり方を示している。具体的には「愛校心と職員としての自覚、学生への愛情を持って行動できる人(慈悲)」「課題の本質を見出し、その改善に向けて主体的・積極的に自ら考え行動できる人(自灯明)」「広い視野を持ち、偏ることなく柔軟に自分と組織をより良い状態にマネジメントできる人(中道)」「コミュニケーションを大切にし、和をもって助け合い、お互いに高め合うことができる人(共生)」である。そうした姿になるために必要な資質能力も具体的に提示されている。これらの4つの資質能力は、のちに説明する人事考課制度を作ったあとでそれらを抽象化させ、4つの教育・ビジョンと連動する形で作成したという。 そうしたあるべき姿(大正大学職員ビジョン)を実現するために、求める人材像、職員研修体系、職能等級基準書を定めているが、これはいわゆるAP(アドミッションポリシー)、CP(カリキュラムポリシー)、DP(ディプロマポリシー)に相当するものとして位置づけられている(図1)。採用に関しては新卒が基本で、若くてこれから伸びそうな人を採用しているが、全体のバランスを見て、即戦力になる人を探したりしている。 この育成・採用方針をもとに、現在行っているのが、図2に示した4つである。外部有識者の助言を受けて定期的に見直している。 まず、ディプロマポリシーとして位置づけられている「職能等級基準書」は、それぞれリクルート カレッジマネジメント226 / Jan. - Feb. 2021表1 教育ビジョン・職員のあるべき姿と必要な資質能力の関係教育ビジョン「4つの人となる」大正大学職員のあるべき姿大正大学職員の必要な資質能力慈悲生きとし生けるものに親愛の心を持てる人となる愛校心と職員としての自覚、学生への愛情をもって行動できる人愛校心、職員としての自覚、学生への愛情自灯明真実を探求し、自らを頼りとして生きられる人となる課題の本質を見出し、その改善に向けて主体的・積極的に自ら考え行動できる人主体性、積極性、判断力、実行力(目標達成)、向上心(チャレンジ)、課題発見・解決力、計画・立案力、リーダーシップ、創造力中道とらわれない心を育て、正しい生き方ができる人となる広い視野を持ち、偏ることなく柔軟に自分と組織をより良い状態にマネジメントできる人広い視野・他者への関心、誠実・公正、柔軟性、セルフマネジメント・チームマネジメント共生共に生き、ともに目標達成の努力ができる人となるコミュニケーションを大切にし、和をもって助け合い、お互いに高め合うことができる人傾聴力、発信力、チームワーク、地域・社会との関わり特集 大学経営を支えるミドルマネジメント職員のあるべき姿と採用・育成方針職員研修体系大正大学職員のあるべき姿ー大正大学職員ビジョンーCurriculum Policy職能等級基準書Diploma Policy求める人材像Admission Policy推進力人事考課職能等級基準書魅力化手当魅力化研究費第3次中期マスタープラン大正大学100年、魅力化構想とそれを実現する働き方改革MIGsINNOVATE 5研修体系職員ポートフォリオ図1 職員の採用・育成に関する3つのポリシー図2 職員育成の体系

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