カレッジマネジメント226号
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37リクルート カレッジマネジメント226 / Jan. - Feb. 2021ケーションを取る職員も増えた」等、意義を実感しているという。年齢主義ではなく、職務に優れた人を管理職にしていくうえで、基準を明確にし、見える化した一連の仕組みの効果は大きいのではないだろうか。平盛事務局長によると、「職員の重要性はかなり早くから認識されていた」とのことで、優れた人材確保のための人事制度や研修制度は2008年頃に作ったが、その後も見直しを続け、充実させてきたのだという。 このように大学改革において職員が重要な役割を果たし、その育成のための体制も整えられているが、特にミドルマネジメント層についてどのような役割を期待しているのか学長に尋ねてみた。ミドルマネジメントに求めたいことは、「型を重視しすぎると固定観念にとらわれるが、型がなく独創性だけでは型破りではなく、単なる『型なし』。両者のバランスが大事」と話す。型は受け継ぐが、とらわれすぎずに自由な発想が求められる。大正大学魅力化構想ではイノベーションを起こしたいので、未来を見据えてあるべき到達目標にどう立ち向かうかが必要だが、どうしても現状を見てしまい何ができるかという発想になりがちだ。だからこそ、そうした柔軟性が大事だという。そうした柔軟性を持ってもらうために行っていることとして、2つのトピックスをご紹介いただいた。 第一は、第3次中期マスタープランの中で設置した、情報基盤整備、働き方改革、戦略的経営・財務、地域戦略、巣鴨プロジェクト、DAC、大学院、就職という8つのプロジェクトがあり、部長クラスが通常の部の仕事以外に、それぞれのプロジェクトのリーダーとして参加している。いわば、ワン・モア・ジョブであるが、部の仕事とプロジェクトの仕事の割合も指針として示して、現時点では負担過剰になることもなく、良い形で運営されているという。2019年12月には大正大学魅力化研修会を教職合同で開催したが、プロジェクトリーダーである部長クラスがプロジェクトの構想を説明し、説明を受けた教職員に気づきを促した後、グループ内でKJ法を使ったディスカッションをして、その議論の内容を発表してもらった。各グループの内容に学長や副学長がコメントし、学外の評価委員に総評してもらったが、実りのある研修で、こうした研修の企画を今後はミドル層にもっとやってほしいという。 全学的に取り組む施策はそれぞれの部署が連携して取り組む必要があり、各ミドル層の管理職は、組織としてしっかりしないと力が発揮できないが、そうした思いもあり2020年7月に重要な会議のあり方を見直した。 以前は、学長、副学長2名、専務理事、事務局長、理事長特別補佐から構成される学長室会議(2015年に設置)で、教学面の重要事項を毎週、審議し、決定していた。それまでは専務理事は経営、教学は学長と切り分けがされてきたが、経営と教学ははっきり線引きができないし、常にお金が絡む。学長が依頼し、専務理事にお伺いを立てると時間がかかる。また案件によっては理事会に上げて方針を決定していては意思決定に時間がかかるが、コロナ禍で迅速に進める必要が出てきた。しかし、学長も理事なのだから、経営に関わってもおかしくないだろうと、常勤理事で経営も含めて議論する常勤理事会のような組織として、学長室会議を総合政策会議に変更した。この総合政策会議には、従来の学長室会議のメンバーに加えて、新たにできた副事務局長、プラス執行役員として各事務部長と学長補佐の代表が出席する。「それぞれのミドルマネジメントが大学の全体的なところを常に視野に入れて仕事に当たってもらうのが一番期待したこと」だと学長は話す。 コロナ禍を経験した中で「これほど職員の力が必要と思ったことはない」と学長は言う。経験したことのないことにいかに対策を取っていくのか、学生や社会の目も厳しく、大学はいかにあるべきかが問われており、教職が一致団結してやっていくことがこれまで以上に意識されているという。大学の魅力化を実現するためには職員の働き方改革が不可欠、という考え方に強く共感する。こうした仕組みを構築して、力強く柔軟なミドルマネジメント層が育ち、大学改革をリードしていくのは多くの大学にとっても一つのモデルになるのではないだろうか。(両角亜希子 東京大学)特集 大学経営を支えるミドルマネジメントミドルマネジメント層の役割への期待意思決定プロセスの変更ワン・モア・ジョブ

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