カレッジマネジメント226号
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38リクルート カレッジマネジメント226 / Jan. - Feb. 2021コロナ禍が世界を覆っている。その影響は社会生活全般に及び、世界に不可逆的変化をもたらしている。当然、各国の大学にも計り知れない影響を与えている。20世紀末以降学生や研究者の移動を梃に進んできた大学の国際化には急ブレーキがかかった。他方、大学授業は急速にオンライン化し、新しい学習の姿も兆し始めた。こうして見れば、真の意味で「21世紀型大学」が登場してくるのはコロナ禍が終息した後ではないか。そう考えざるを得ないほど、今回のインパクトは大きい。今後、大学の舵取りはますます不確実さを増すだろう。大学が教育研究を保証し大学経営を高度化していくためにも、それらを担える人材が今以上に必要となる。本稿では、東北大学が過去10年ほど続けてきた「大学マネジメント人材育成」の取り組みを紹介し、議論の参考に供したい。東北大学高度教養教育・学生支援機構(旧・高等教育開発推進センター)は2010年3月、文部科学省より「教育関係共同利用拠点」(以降、本拠点)に認定された。これまで第一期、第二期と事業を継続し、2021年度からは第三期「大学教育イノベーション人材開発拠点」を開始することになっている。本拠点を主として担うのは機構内に設置された大学教育支援センターである。本拠点の特徴は、教職員の多様なニーズやキャリア・ステージに応じて広範に研修プログラムを開発・提供しているところにある。さらに、そのコンテンツの一部をPDP online(http://www.ihe.tohoku.ac.jp/CPD/PDPonline/)として無料配信し、国内外の高等教育機関に活用頂いている(図1参照)。研修プログラムのうち、次代の大学を担う「大学マネジメント人材」を育成しているのが、履修証明プログラム「大学変革リーダー育成プログラム(Transformational Leadership Program: 以下TLPと略)」だ。大学院で大学経営プロフェッショナル人材を育成・活用する欧米の大学とは対照的に、日本では一部の大学院での取り組みを除き、大学マネジメント人材の育成機会は限られている。そこに一石を投じるべく、本拠点では活動初期から先行事例調査を行い、海外大学(カナダ・クイーン図1 東北大学 教育関係共同利用拠点の取り組みプログラム開発の背景東北大学高度教養教育・学生支援機構 教授杉本和弘東北大学「大学変革リーダー育成プログラム」Contribution 1寄稿<履修証明プログラムによる育成>大学の教育研究や経営を支えるマネジメント人材育成の試み博士課程学生新任教員産業界現職教職員・大学マネジメント層幅広い教育関係者世界最先端の知見・実践で高等教育を変革する人材を輩出し、大学教育イノベーションに貢献大学変革リーダー育成プログラムTransformational Leadership Program in Higher Education・教職協働による変革に向けた共同研修・所属機関での改革案を策定し実行へ専門教育指導力育成プログラム・DBERのエビデンスを導入・学修成果向上のための授業変革を担う人材育成大学教員準備プログラムPreparing Future Faculty Program新任教員プログラムNew Faculty Program大学マネジメント力開発プログラム(対象:大学執行部・教員・職員)東北大学をプラットフォームとした修了生・協力者による人材ネットワーク、HEIJと連携実務家教員育成研修プログラムとの連携BP・教育訓練給付金認定講座大学教員基礎力&省察力の涵養履修証明プログラム化60時間超の研修=学びの質保証SDPDTPNFPPDセミナー<大学教育イノベーションの土台となる教員・職員に必須の基礎的知識・スキルを獲得>PDP online いつでもどこでも学べる最先端かつ高品質のFD・SDコンテンツ指定国立大学法人東北大学 高度教養教育・学生支援機構[教育関係共同利用拠点]PFFPTLP(履修証明プログラム)高等教育リテラシーの形成高等教育論・大学教育論教育内容・カリキュラム論教授技術論専門分野での指導力形成学習指導法実験指導法研究指導法学生支援力の形成学生論・学生相談キャリア教育健康教育マネジメント力の形成組織運営論大学人材開発論教育マネジメント

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