カレッジマネジメント226号
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39リクルート カレッジマネジメント226 / Jan. - Feb. 2021ズ大学)との連携を通して、大学マネジメント人材育成に向けた研修プログラムの開発・提供を行ってきた。2011年から1年間のプログラム(60時間)を2年にわたって試行し、2013年からは約2カ年の履修証明プログラム(120時間)を開発して現在に至っている。これまでに、学習内容・時間の更新や受講者への訴求性等を考慮して数度名称を変更してきたが、目標や基本構造は変わっていない。その本質は、大学における教育研究活動の質を高め、大学マネジメントに貢献できるミドルからシニアレベルの人材を育成することにある。現行のTLP2019-20は、約2年弱(ただ、コロナ禍を受けて2021年度まで延長予定)で総学習時間は180時間に及ぶ。受講料30万円だが、文科省の職業実践力育成プログラム(BP)の認定を受け、厚労省の教育訓練給付金も受給可能となっている。受講者は30~40歳代のミドル層教職員が中心である。学習方法は、①対面やオンラインによるセミナー等で高等教育に関する理論や知識を幅広く修得しながら、②全4回の集中セミナーにおけるプレゼンテーションとコンサルテーション、③国内大学調査、④海外大学調査を行って実践的に学ぶ構造となっている(図2参照)。これら一連の学習の中核に位置づくのが、受講者自らが所属機関の課題を発見・設定して「改革案」を作成し、実際に実行しながら省察を行うアクション・ラーニングである。組織改革を行うには、取り組みの妥当性や有効性を問いながら、時に協力者を巻き込み、反対勢力を説得するなど、様々な壁を乗り越えていかなければならない。しかし、それこそ現場のリアリティである。TLPでは、ただ受動的に知識を学ぶだけに終わらせず、現場に出て実践し、その経過や成果を持ち寄って議論し合い、改革案を練り上げていくことを重視している。そうした困難な改革に挑む受講者を支援するため、大学現場を知悉する経験豊かな先達教職員にアドバイザーを依頼し、毎回の集中セミナーで議論や助言を行って頂いている。それに加え、設置形態も規模も異なる大学から集った教職員が平場で議論・支援し合うことも重要な学びと成長の機会となっている。グループやチームで学び合う関係性を形成することもリーダーシップ育成には重要な要素だ。最後に、これまで本拠点で展開してきた「大学マネジメント人材育成」の成果と課題を振り返りつつ、今後の方向性を述べておきたい。この種の研修プログラムの成果測定は難しい面があるが、少なくとも受講者による主観的評価(アンケート)を見る限り、特に上述の「プレゼンテーションやコンサルテーション」「国内外大学調査」に対する満足度が高い。つまり、セミナー等知識教授型の科目も決して評価は低くないが、より現場に近いところで実践的かつ相互作用的に学ぶことに受講者は効果を見いだしているといえる。受講者は、「改革案」をめぐる議論や実践を通して、「課題の背景にある原因を構造化して把握する力」「外部環境や組織全体を俯瞰して捉える幅広い視野」「現実課題を多面的・多角的に分析する力」が身についたと評価しており(以上は、2017-18年度実施プログラムの評価)、プログラムの成果を基盤に、実際に各大学でカリキュラム改革や教育質保証体制の強化につなげた事例も出始めている。受講者個人の意識・行動変容に加え、組織変容にもつながる成果として注視しているところである。他方、課題として、高等教育内外の急速な変化と教職員の多忙化を見定めながら、適切な学習内容の質と量を確保したプログラムを開発し、それによって十分な範囲・数の教職員にリーチしていく必要性を指摘したい。それはもちろん、本拠点だけでは到底なし得ない。本拠点による取り組みを一つの試金石として「大学マネジメント人材育成」の機会を拡大し、日本の大学を変革していくだけのクリティカルマスを確保していくことが必要だろう。大学マネジメント人材育成は日本の高等教育全体の課題である。特集 大学経営を支えるミドルマネジメント図2 TLPの学習構造TLPの内容と方法成果と課題、そして今後の方向性

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