44大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングといった座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長及び改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索するなか、様々な取り組み事例を積極的に紹介していきたい。今回は、学修成果の可視化を軸とする改革に取り組む金城学院大学で、高野祐二副学長、渡辺恭子学長補佐(IR室長)、桐原健真学長補佐にお話を伺った。金城学院大学は、学院として131年目、大学としても71年目を迎える、伝統ある女子大学だ。5学部合計の学生数が約5500人と、規模としては中規模となる。高野祐二副学長は教育上の特徴について「福音主義のキリスト城学院大学は、地元を中心に高い就職実績をあげ、キャリア教育にも積極的に取り組んできた。そのなかで、社会に貢献できる人物を育成していくには、科学的根拠に基づく学修成果の可視化が必要と位置づけ、その第一歩として、アドミッション、カリキュラム、ディプロマの3ポリシーの改定に着手した。建学の精神も反映した全学共通の3ポリシーを2017年度に作り、2018年度からはそれに合わせる形で、各学部各学科の3ポリシーを整えていった。取り組みの中心になっているのは、2019年度に設置され、渡辺学長補佐が室長を務める「IR室」だ。高野副学長は開設の経緯をこう説明する。「2016年度から事務組織にIR担当職員をおき、IRの取り組みを進めてきました。学修成果の可視化を含め、より効率良く、有効なデータを集めて分析をしたいということ、また、内部質保証の構築・整備の観点から、教員が入る形のIR室を作りました」。桐原健真学長補佐は、内部質保証教に基づく、女子学生の全人教育を目指しています」と言う。共学とは異なる女子大学の特性については、渡辺恭子学長補佐(IR室長)が「在学中に、女性の一生というものにイメージをつけてほしい」と語る。「そのための1つの学びとして、『女性みらい』という科目を全学必修としています。青年期から出産・子育て、中年期、それから老年期までの、女性の心身の健康について学ぶ授業です。これらを通じて、女性には多様な生き方があり、多様な生き方を選ぶことができると理解し、どんな生き方をするときにも金城での学びを活かしてほしい」。このほか、「女性みらい研究センター」を2018年に開設し、卒業生以外も含む女性が、子育てなりのあとで再度キャリア形成をする際に役立つ、女子大学の役割を考えている。「女性の一生涯を金城が支えるというコンセプトでおりまして、在学中だけでなく、広い世代にわたって女性と関われる大学であるといい」と高野副学長は言う。「学ぶと働くをつなぐ」観点での金リクルート カレッジマネジメント226 / Jan. - Feb. 202129金城学院大学学修成果の可視化を軸に、全学の教育改善に取り組む高野祐二 副学長渡辺恭子 学長補佐桐原健真 学長補佐『一生涯、女性を支える』大学IRで科学的根拠に基づく質保証
元のページ ../index.html#44