カレッジマネジメント227号
18/50

18新型コロナウイルス感染症の問題は、2020年の年明けから突然始まった。対岸の火事が日本にも及んできたとき、大学は入試、卒業式、新学期という年度の切り替えの時期に遭遇していた。日本の多くの大学は、入試は何とか乗り切り、卒業式等の行事は中止で対応したが、最大の懸案事項は、4月から授業をどうするかであった。金沢工業大学の動きは早かった。既に、2月から対策会議を設置して検討を開始した。幸いにもICT化の先進校である。「KITポータル、KITナビゲーション、KITe-シラバス」という独自開発した教育マネジメントシステムが完備しており、このうち「e-シラバス」は、授業の資料の掲載、音声・動画の配信、外部サイトへのハイパーリンク付与、レポート課題の提示とレポートの受理、小テスト、アンケートの実施等、アクティブラーニングを進めるうえで活用されていた。これを用いれば、遠隔授業ができる。また、このe-シラバスは教務データや学内のほかのシステムと関連づけられているため、学生個々人の学習状況や大学生活の状況を把握することができる。従って、予定していた4月20日から、全面的にオンラインに変更して授業を開始することはできた。しかしながら、学生はそれを受講できる体制にあるか。特に気がかりなのは新入生である。4月1日の入学式は、新入生のみを対象とし、31の教室に分散してライブ配信により実施し、オリエンテーションや遠隔授業に関わる基本的なパソコンのネットワーク設定等は行えたものの、予定は大幅な変更を余儀なくされた。さらに緊急事態宣言に伴い、全キャンパスへの学生の立ち入りが禁止となった。そこで、4月21日から27日まで臨時のコールセンターを設置した。Gmailの「安否確認システム」でネット環境の確認が取れた学生を除き、残る約2800人に対して、職員20名が手分けをして電話連絡を行い、ルーターの貸し出し、e-シラバスの使い方説明等、学生個々人の状況に合わせて授業の環境整備をサポートした。こうして、授業開始から10日間、4月30日には1年生の97.7%がe-シラバスを利用するに至った。後学期の対面と遠隔の併用でe-シラバスは反転授業(知識はオンラインで議論は対面で)にも大きな力を発揮した。遠隔のみでも授業が実施できることは分かった。しかし、オンラインで授業を履修するだけの生活は、孤立感を高める一方である。とりわけ1年生は、大学に足を踏み入れていないに等しく、同級生や先輩もほとんど知らない。これをどのように解決するかが、新たな課題となった。「学生は、心身が整ってこそ、授業にも力が入るのです。このような環境下で学生が孤立感を覚えないように、他者とつながって友人ができるように、正規のカリキュラムのなかでも、課外活動でも、人と関わる工夫を重ねました。オールラウンドな支援の仕組みをつくるために総力をあげて取り組みました。」と、大澤 敏学長はその具体的な取り組みを語ってくださった。その支援の仕組みをまとめたのが図表1である。この図からは、いかに多くの支援策が練られたかが分かる。しかリクルート カレッジマネジメント227 / Mar. - Apr. 2021大澤 敏 学長メンタルで孤立させないための様々な働きかけe-シラバスの活用に向けた新入生の状況確認からコロナ禍でのオールラウンドな学生支援金沢工業大学1CASE

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る