カレッジマネジメント227号
2/50

技術革新により、産業構造や働き方が劇的に変化することが予想されます。本連載では、領域×Technology=「X Tech(クロス・テック)」に着目し、産業の大きな変化の兆しを捉えていきます。取材協力竹内文哉氏 株式会社富士経済 インダストリアルソリューション事業部 第一部 第一課 主任#12 LogisticsTech(物流とテクノロジー)物流業界の人手不足対策とユーザーニーズの多様化で急拡大ロボティクス、IoT、AIを活用した物流テック最前線で変わる産業アナログだった物流業界のデジタル変革が進んでいる。ここ数年でネット通販を利用する消費者が増えた。コロナ禍で消費者の購買・行動様式が変化し、小口・多頻度といった配送需要が多様化した。さらに即日配送や配送料のサービス競争が加速、現場作業はひっ迫し、人手不足は深刻な問題となった。そこで、これまで属人的に行われていた物流業務を機械化・自動化すべく、舵を取り始めたのだ。富士経済の調査によると、2020年の次世代物流システム市場は3823億円が見込まれており、2025年には6468億円(2019年比71%増)が予測される。「市場拡大の要因は、ロボティクスによる省人化・自動化。AGV(無人搬送車)による自動搬送をはじめ、作業員の手元までピッキングする商品を持ってきてくれるGTP(Goods To Person)タイプの倉庫ロボットシステム(棚搬送AGV)、人と協働しながら作業支援を行う自律型のロボットAMR(協働型ピッキング支援ロボット)等の導入が拡大しています」(竹内氏)立体自動倉庫システムや自動搬送・仕分けシステム等のロジスティクス・ファシリティ、AGV・アーム付AGVやリニア搬送システム等のロボティクス・オートメーションは海外企業が市場をけん引してきたが、日本でも大手製造業やスタートアップ、ベンチャー企業が参入し、国内需要や海外販売を拡大しつつある。新たな潮流として、ドライバー不足を解決する物流向けドローンや無人宅配・配送ロボット、自動運転トラック、AIを活用したトラックのシェアリングシステム、配送ルートを最適化するシステム、再配達回避システム等、ここでは挙げきれないが現場作業を自動化・省力化するテクノロジーだけでなく、新たなサービスの成長が期待されている。「配送ニーズの多様化によって、物流業界は大きく進化しています。競合・協業他社に加え、自治体、大学等と連携して新たなサービスを生み出すことも増えていくでしょう」(竹内氏)物流は製造・流通・小売業等、あらゆる事業やサービスに関わり、社会インフラを支えるやりがいもある。社会の変化に柔軟に対応し、幅広い視点と分析する力が今後はより求められていくだろう。(文/馬場美由紀)(億円)020004000600080002025年予測2023年予測2021年予測2020年予測2019年見込AIIoTロボティクス・オートメーションラストワンマイルロジスティクス・ファシリティ3778億円3823億円4055億円4912億円6468億円次世代物流システム市場出典:株式会社富士経済『次世代物流ビジネス・システムの実態と将来展望 2020』

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る