カレッジマネジメント227号
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20リクルート カレッジマネジメント227 / Mar. - Apr. 2021学生がポジティブになれば、次は、その力を、社会に対する支援活動に用いた。それにより、学生自身もさらなるエネルギーを得ることができると考えたのである。再度、図表1に戻れば、多くの緑の矢印が大学の外に向かっていることが分かる。このうち、「地域連携プロジェクト」、「社会実装プロジェクト」は、金沢工業大学の教育の基本であるCDIOという工学教育の世界標準にもとづくプロジェクト型の教育を指す。CDIOとは、Conceive(考え出す)、Design(設計する)、Implement(実行する)、Operate(操作・運用する)を意味し、アイデアをいかにして実社会に組み込める形のあるものにしていくかという理念である。日本の大学で初めてCDIOを導入して以来、その理念は4年間を通じての必修科目である「プロジェクトデザイン教育」において、様々に具現化されてきた。そのなかに「地域連携プロジェクト」があり、これは1〜2年生を中心に行われ、「社会実装プロジェクト」は、研究室所属の学生や院生が中心となって実施されてきた。社会のニーズを見極め、社会と連携し、チームでプロジェクトを遂行することで、必然的に他者とつながり、そこでコミュニティが形成される。また、「SDGs推進センター」では、学生が中心になって小中学生用のゲーミフィケーション教材の作成や、地域活性化の取り組みを行ってきたが、小中学校が一斉休校になったなか、小中学生用のオンライン学習プログラムの作成やZoomを利用しての地域活性化活動を企画・実施した。子どもたちの学習を支援するための活動が、学生自らの主体性やチームワークを生み出すのである。バーチャルな環境においても、問題の発見や実践的な解決策の考案は可能であり、具体的な対象があることで、学生の協働が可能になる。他者への支援を考えることは、自身の救いにもなったのである。金沢工業大学の場合、75%が県外学生であり自宅を離れての下宿生である。突然始まる1人暮らしが不安を増大することは容易に想像ができ、これらのきめ細かな対応は学生の脱落を防止した。全国の学生調査によれば、退学を考える者が12%という報告もあるが、金沢工業大学の退学率は低い。これらの支援が一定の効果をもった結果とみてよいのではないだろうか。加えて、学長が感謝の弁を述べられていたのは、大学の指定寮の大家さんである。上述のように県外学生が多い金沢工業大学では、この大学の学生のみを受け入れてもらっている寮や下宿を指定寮とし、その数は約4100室に及ぶ。この大家さんたちが、自宅を離れて1人大学にやってきた学生の、日常生活や心身の安定に心を砕いてくださったという。人間は1人では生きることが困難であり、他者との関わりが生きる力になることが、はからずも証明された数カ月であった。新入生と共に問題を抱えていたのが、就活を始める3年生である。コロナ禍による求人数の減少、移動制限のもとでのままならない就職活動は、不安と不満を増大させた。学生の不安や不満をどのようにして軽減し、就職活動をスムーズに進めることができるか、これが「進路開発センター」の役割であった。学生のための企業研究、自己分析、志望分析等、これまでも担ってきた役割は、これまで以上に綿密に実施した。それとともに、企業の求人開拓にはさらに力を入れた。しかしながら、キャンパスへの外部者の入構は規制しており、これまでのようにキャンパス内での合同会社説明会や面接試験の実施は難しい。ここでもオンラインの力を利用した。Zoomを利用した企業説明会を開催し、多くの企業に参加を呼びかけ、情報を収集した。面接試験は、Web等での実施の検討を求めた。また、電話による学生の就職相談も実施した。もう1つの力が卒業生である。大学として卒業生へアクセスをし、卒業生の働く会社の求人の有無を尋ねたり、後輩へのアドバイスを依頼した。先輩から後輩へのアドバイスは、就活生には大きな励みとなった。このように、進路担当教員や進路開発センターのスタッフは、学生と企業とのマッチングを如何にして高めるかに尽力し、結果的には求人の窓口は広がった。2020年12月の段階での就職内定率は、93%に達している。コロナ禍で社会全体としての雇用の減少があるにも拘わらず、就活生の多くは進路が確定した。大学として、あるいは、「進路開発センター」の努力が実った結果ではあるが、それだけではない。これまでの卒業生の社会での実績、ひいプロジェクト学習による他者への働きかけオンラインや卒業生も活用した就活支援

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