カレッジマネジメント227号
21/50

21リクルート カレッジマネジメント227 / Mar. - Apr. 2021てはそうした卒業生を送り出してきた大学の教育に対する信頼、これらがあってこそ、困窮する時期においても、安定的な就職率という結果を導きだせるのではないだろうか。大学にとって重要なことは、たとえ、こうした緊急時・非常時であっても、学生の学習の質を担保し、学習の成果を出すということである。何があってもコンスタントな結果を出す、そのために金沢工業大学が用いているのが、冒頭で記したe-シラバスであり、そこには専門能力と人間力の成長の過程と程度を、学生本人と教員とが共有し、また面談を経て確認し合うシステムが組み込まれている。どのような力が測定されているのかを示したのが、図表3である。専門能力に関しては、各学科が定めた項目に関して、授業アンケートにおける達成度評価(自己評価)に加えて、教員による成績評価、その学科の平均の成績評価の3つを図示することで、学生は、自己評価の客観性や学科内での自分の位置を確認することができる。人間力に関しては、大学としてその涵養を重視している5つの能力を、毎学期末にルーブリックを用いて自己評価し、それでもって成長を確認する仕組みとなっている。これまで行ってきたこれらの評価の重要性は、さらに増したというのが、学長の見解である。なぜなら、対面と異なりネットの場合、ネットの向こう側で何が生じているのかが分かりづらいからだという。学生は、授業は履修している。しかし、大学として、学生の成長を全体的に把握することは容易ではない。それは学生も同様である。専門的な知識を獲得したと思っても、他者と比較した場合、それは充分な程度なのか。こうした課題への対応として、前述の評価方法は役に立つ。学生の自己評価と教員の評価を双方で共有しつつ、学生の学びと成長を包括的に把握し、大学としての支援策を講じようとしている。ほぼ1年。異例の状況であったが、それだから明らかになったことは多く、来年度以降もこうした状況が続いたとしても、それへの対応策も見えてきた。最大の課題は、いかにして学生間のつながりを作るかということである。ただ、コロナ禍で金沢工業大学が行っているこれらの学生支援は、何も新規な試みではない。これまで実施してきたことを、一層意識化し、各種の活動を構造化して、オンラインに載せたのだと言ってよいだろう。そのうえで学長が目指しているのは、オンラインだからこそ容易になった国際化とDX(デジタル・トランスフォーメション)による新たな価値創造である。「遠隔教育の質を下げることなく海外とつながることで、学生の視野の拡大が望めます。また、例えば、人間がその場に立ち会うことが困難な状況下の問題を、画像解析しロボットで遠隔操作しつつ解決するといったことは、リアルをバーチャルに代替することで可能になるものです。」と、可能性を語られる。これまでの蓄積の上に、現況を利用して、さらなる教育の可能性を追求されようとしている。ともすればうつむきがちになるわれわれに、一条の光を与えてくれる言葉である。(吉田 文 早稲田大学教授)コロナ禍のなかでも学生の成長を可視化して共有いかに学生間のつながりを作るか特集 ニューノーマルの学生支援図表3 専門能力と人間力の可視化データを学生と教員が共有しながら面談することでコロナ禍においての学びと成長を支援12341234環境土木工学技術者に向けての自己形成能力構造物の設計・施工・維持管理に関する基礎的能力自然環境の活用に関する基礎的能力空間情報を計測・分析・評価する基礎的能力自律と自立リーダーシップコミュニケーション能力プレゼンテーション能力コラボレーション能力環境土木工学の統合化能力キャリアデザイン能力プロジェクトデザイン能力成績評価自己評価学科平均1年前学期1年後学期各学科が定める専門能力を、①成績評価、②成績評価の学科平均、③授業アンケート内の達成度評価から算出し、可視化している。専門能力の可視化学期末に実施する達成度評価ポートフォリオ内の設問において、KIT人間力を5つの能力として、ルーブリック手法で自己評価し、可視化している。人間力の可視化

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る