カレッジマネジメント227号
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22今回ご紹介するのは、京都橘大学である。1902年創立の京都女子手藝学校を祖に持ち、現在では男女共学の6学部13学科、4研究科を擁する伝統校だ(大学の沿革は図1参照)。京都市山科の地に約4850人が学ぶ(2020年5月現在)。2020年度の春先以降、コロナ禍における学生支援をどのように展開したのか。特に困難に直面した新入生をどのようにケアしたのか。成果のひとつである「たちばなConnect Project」を中心に、日比野英子学長に伺った。京都橘大学には、人と人とのつながりのなかで支えあう文化が大切に受け継がれてきた。学生同士のつながり、とりわけ新入生向けのもので言えば、最たるものにオリター制度がある。春先に実施される2日間の新入生セミナーでは、2回生・3回生がオリターとなって、新入生歓迎のために心を砕く。企画や運営に積極的に参画し入学間もないタイミングでの行事に緊張している新入生をリードする。先輩にリードしてもらって学科全体の交流が進み、楽しい時を過ごすことで、帰る頃には笑顔になっている。こうした新入生のなかからは、自分達を歓迎してくれたオリターの先輩に憧れ、次年度のオリターを目指す者が出てくる。ボランティアであるにも拘わらずこうした循環が起こり、例年希望者が殺到する「難関」になる学科もあるほどであったことが、この取り組みの意義深さを示す証左だろう。京都橘大学が女子大であった1980年代頃から実施しており、2005年の共学化を経てもなお連綿と受け継がれてきた伝統である。授業に関わることでも先輩学生が活躍する姿を頻繁に見ることができた。京都橘大学にはLA(ラーニングアシスタント)の制度が置かれており、学修面においても学生同士で支え合う仕組みが備わっている。LAを置いていない学科もあり、また、学部学科によって業務範囲は異なるものの、学修上のサポートやアドバイスはもとより、学科企画への参加や運営補助、ワークショップや自主企画の運営までをもこなす。さらには、特定学科に限られるが、事前学習と授業準備への参画を経たうえで、演習科目内における下回生への技術指導や振り返りのファシリテーションといった、重要な役割を担っているLAもいる。また、学内の学習スペースであるラーニングコモンズの管理・運営を担い、機器備品や書籍の貸し出し、学習内容に適したブースへの案内等を担当するLAもいる。学修そのものとは少し異なるが、SA(スチューデントアシスタント)という制度もあり、授業に使用されるパソコンや機器がトラブルを起こしたときに、教務部から先輩学生が飛んできて解決する姿を見たことがある学生も多リクルート カレッジマネジメント227 / Mar. - Apr. 2021日比野 英子 学長コロナ禍によって途絶えかけたもの学生の相互扶助という伝統のもと結実したオンラインでの学生支援京都橘大学2CASE

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