カレッジマネジメント227号
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25リクルート カレッジマネジメント227 / Mar. - Apr. 2021難な状況下だからこそ、教育的視点が大切にされており、また、その根底には学生への信頼があったように筆者の目には映ったことである。支援というと強者が弱者を支えるようにイメージされるかもしれないが、少なくとも京都橘大学においては、これまで見てきたように、大きな枠組みや仕組みを大学が整えつつ、その枠内で自分に必要なことを自分で選び取ることができる存在として学生を信じている。そうした認識が通底にあるからこそ、オリターやピアサポーターのように主体的に活動する存在が象徴としてあるのであろう。「本学にとってこうした認識や体制はコロナ禍に限ったことではありません」と日比野学長は補足される。主体性を育むきっかけとしてこうした伝統がある点は見逃せない。多岐にわたる支援である「たちばなConnect Project」は、大いに学生の支えになったことだろう。プロジェクトとしては8月末を以て一旦終了を迎えたが、助け合いの精神は色々なかたちでその後も受け継がれている。学生からはオンライン環境だからこその工夫を凝らした企画も多く出た。ピアサポーターが自主的に立てたオンライン企画には学習に関するものも多く、TOEIC©対策企画には多くの1回生が参加し、学習時間の増加やモチベーションアップに大きく貢献した。また、伝統ある大学祭―橘祭―を学生主導でオンライン実施し(11/29開催)、成功裡に幕を閉じることができたことも、学生が状況にただ流されるのではなく、経験から何かを掴み取ってきた証左だろう。後期の授業は、対面形式とオンライン形式を使い分ける方針でスタートしたが、「受講者数80人」という水準と「対面の必要性を軸にした科目特性」という2つの観点で判断し、結果約9割が対面授業となった。「コロナ禍以前より本学は、元々クラスはできるだけ小さくしようという方針があります。学生の一人ひとりの顔を見ながら教育しようという考え方が元からあったためです」と日比野学長は言う。9割対面を以てキャンパスの様子がかつてに戻ったと取ると見誤るだろう。かつてに戻ったのではなく、オンライン大学祭に表れているように、教職員も学生も、伝統を受け継ぎつつ新しい学園生活を営み始めている。もちろん、9割もの授業を無事に対面実施できている裏には、「感染対策を徹底している」という学生と教職員の努力があることは想像に難くない。学内での感染対策は功を奏しており、日々の授業が守られている。こうした少人数授業による丁寧な教育と徹底した感染対策の双方がもたらしたのは、学生の学びであり、これは何より日比野学長を始めとする教職員が春先からずっと守りたかったもの、守ってきたものであり、同時に学生も渇望してきたものだ。6月末に行われた学生と教職員の対話では、学生の将来への悪影響を避けるべく継続可能な大学教育を模索してきた大学の考えが、学生に投げかけられることになった。その末には、学生から「自分達も大学に協力したい」という声が上がったそうだが、この対話が勝ち得たのは、上述した日々の学びから、キャンパスに学生が戻ってきたことを喜ぶ教職員の姿、画面の中で見ていた先生をリアルに見かけて驚く新入生の表情といった細やかな(しかしかけがえのない)ものまで、多くのものがある。そもそもこうした検証に学生の声を盛り込んでいること自体から、我々は読み取れることがあるのではあるまいか。今の京都橘大学は、次の春に向けて、感染症の流行状況や学生アンケート調査の結果等を検証しながら、これからの大学の在り方について様々な可能性を検討しているところだ。対人援助分野の学科が多い中で、下期に際して検討したように、適切なハイブリッドの形を模索中だという。「状況に応じた調整を行いながらも、本学の学びがこれまで以上に良くなるように検証と検討を進めています」と日比野学長は力強く語ってくれた。ところで、橘は「非時香菓」、即ち、時を選ばず香る果物だともいわれている。モニター越しにしかつながることができない苦難の時でも、教職員や学生の活躍や可能性が閉ざされることはなかった。今年度の新入生が得た経験は例年とは違うものだったかもしれないが、先輩学生や温かく見守る教職員の存在を確かに感じ、次は自分がそうした支援側に立つべく、精進してくれることだろう。(立石慎治 筑波大学教学マネジメント室 助教)プロジェクトがもたらしたものと今後への動き特集 ニューノーマルの学生支援

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