カレッジマネジメント227号
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28リクルート カレッジマネジメント227 / Mar. - Apr. 20212020年4月以降、多くの大学が遠隔授業を取り入れるなかで、遠隔教育の「教育の質」をめぐり様々な議論がなされてきた。遠隔授業を含め、大学教育のあり方そのものが問われるなかで、大学教育を担う教員が、どのような状況にあり、授業運営のなかでどのような課題を抱いているのかをみることも、今後の大学教育のあり方を検討する材料になるものと思われる。コロナ禍の大学教育への影響は、各大学で学生・教員を対象とする調査が行われている。しかし、この全体状況を把握することは困難である。そこで、本稿では一般社団法人大学教育学会による会員へのアンケート調査の結果を紹介したい(3)。同学会は大学教育を研究対象とする学術団体として、国公私立の大学等の教員・職員等、人文社会科学・自然科学・医療系・複合領域等の様々な専門領域の大学関係者を会員とする。このような調査対象の特性から、この調査結果はコロナ禍が大学教育に与えた影響を量的に把握するための参考になると考えられるためである。この調査からは、2020年前期の状況として、①教員は教育関連業務に多くの時間を費やすこととなり、研究時間が減少したこと、②教員は、多くの学生は遠隔授業においても意欲的に授業に取り組んでいると評価している一方で、遠隔授業における学習成果の評価の難しさが示されている。この結果を具体的にみるために、2020年度前期の授業期間における教員の業務時間について尋ねた結果を示したものが表1である。各業務に対して1週間に要した平均時間数をみると、教育関連業務が約30時間(授業準備14時間、授業時間7時間、課題・レポートの採点・添削7時間、学生指導・相談3時間)、研究に約5時間、大学運営業務に約9時間(コロナ関連以外の通常業務5時間、コロナ関連の業務4時間)となっていた。大学教員の業務時間について東京大学大学経営・政策研究センターが2019年に行った大学教員調査では、学期中の1週間の時間配分の平均は、教育15.2時間、研究13.9時間、管理運営9.5時間と示されている(4)。対象が異なることから比較に留意が必要であるが、コロナ禍のなかで個々の教員が教育関連業務に多くの時間を費やしたと言えるだろう。表1では、担当科目数による違いも示しており、担当科目数が増えるごとに教育関連業務、特に授業準備にかかる時間数が増加し、研究時間が減少していることがわかる。このように教育関連業務が増大していたことは、業務時間の増減状況を尋ねた結果からも示されている(図4)。コロナ以前と比べて、授業準備は83.4%が、課題・レポートの採点・添削は67.6%が「以前より増えた」としており、自身の研究については67.6%が「減った」としている。コロナ禍のなかで遠隔授業の対応に多くの時間を使わざるを得ない状況となり、研究時間が減少したことが明確に示されているのである。同調査では、このような変化の背景として、遠隔授業に対して多くの教員が、毎回の授業で課題を出し、また、授業においては同時双方向のディスカッション等を取り入れるなど教育上の工表1 2020年前期の各活動についての1週間に要した平均的な時間 (単位:時間)図4 2020年春学期の授業期間に要した業務時間の増減 (n=241)業務の内容1人で担当している科目数全体(N=260)1-3科目(n=94)4-6科目 (n=118)7科目以上(N=48)教育関連業務授業準備8.917.919.514.2授業時間4.08.010.66.8課題・レポートの採点・添削5.58.59.37.2学生指導・相談2.03.03.52.7研究自身の研究5.74.23.64.8運営業務コロナ関連以外の通常業務(会議や打ち合わせ等)5.83.74.25.1コロナ関連の業務(会議や打ち合わせ等)4.83.63.14.20102030405060708090100(%)授業準備授業時間課題・レポートの採点・添削学生指導・相談自身の研究コロナ朋連以外の通常業務(会議や打ち合わせ等)減った無回答変化なし以前より増えた研究関連業務教育関連業務運営関連業務遠隔授業における学習成果の評価が課題に遠隔授業への対応により研究時間が減少

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