カレッジマネジメント227号
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31リクルート カレッジマネジメント227 / Mar. - Apr. 2021達の関心に沿って設定した。調査の実施は各大学の協力を得て行われた。今年度の前期は、全国の大学で様々な授業形式がとられていたが、CCP6の大学も例外ではなかった。調査結果では遠隔・ハイブリッドでの受講が多く、後期になってからは対面もしくはハイブリッドでの受講者が多数を占めていた。他の調査結果と同様に学習時間については、増加した者と減少した者、変化していないという者に3分されていた。前期の成績については、2年生は成績が改善した者が44%、3年生では30%、4年では16%。悪化した者は2年で24%、3年で16%、4年で13%と、全体的には成績は昨年度より良くなっていた。これはリポート課題による評価が増え、筆記試験が減少したためかもしれない。学生達は前期の授業をどう受け止めていたのか。講義形式についての評価をみたのが図1である。4つの方式を上げて評価させたが、対面方式が相対的には最も評価が高く、オンデマンド方式の評価が最も低かった。オンデマンド方式は学修者の都合によって場所や時間を選ばないで学習できるメリットがあり、繰り返し視聴もできるので、知識伝達には活用の仕方次第で有効という声も聞くが、対象となった6大学の学生の評価は決して高くない。一人で学習することについての不満はやはり強かったし、オンデマンドで提供されるコンテンツの質的改善は不可欠であろう。ついての尺度だけでなく、安心─不安の軸での主観的な尺度で見れば個人差が大きくなっている。感染予防策を取ったとしても不安に感じる学生は必ず一定数いるということになる。それでは不安の内容はどのようなものなのか多い項目を図3からみてみると、最も多いのは「知識・スキルが本当に身についているか不安」が71.6%(「そう思う」+「どちらかといえばそう思う」合計)で、物理的な制約である「演習・実習が充分にできないことが不安」(71.2%)と並んで多い。これらに次いで「クラスメイトと理解度の共有ができないため不安」(66.4%)「授業で理解できないことがあっても、相談することが難しく不安」(64.3%)となっており、対面コミュニケーションによる確認や相談がしにくいことが不安の中核となっている。「知識・スキルが身についているかという不安」は成績が不振であった学生だけが感じているわけではない。図4は前の学期と比べ「成績が良くなった図2はそれぞれの講義形式に対する不安について質問した結果である。感染拡大の第2波から抜け出し、第3波となる前の11月下旬~12月初旬に聞いているが、どの方式においても不安を感じている学生が過半数を占めている。参加した学生達との議論の中では、安全と安心の違いがこの結果の理由ではないかという意見が多かった。この学習プログラムを始めた当初は、6つの大学の所在地による条件の違いによって学生の意識の差が出てくることを想定していたが、学生達は次第に属性の違いとともに、“個人差”に注目するようになってきた。台風や地震のような自然災害の安全度が、事前事後に数値化された客観的な指標で測られるように、「安全」というのは定量的な尺度化がある程度可能である。他方、「安心」というのは主観的な尺度で測られるものであり、同じ地域、環境、条件であっても個人の認識による差異が大きく影響する。コロナ禍については感染者数、重症者数・率等の安全─危険に特集 ニューノーマルの学生支援図1 講義形式に対する評価図2 講義形式に対する不安オンデマンドオンラインハイブリッド対面大変よくない良くないどちらともいえない良い大変良い7.25.37.75.622.222.238.911.111.557.719.23.830.745.413.35.333.041.011.17.7(%)ないあまりない少しはあるあるオンデマンドオンラインハイブリッド対面29.922.834.623.535.323.517.642.319.23.834.032.510.737.821.211.1(%)学習形式についての評価と不安

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