カレッジマネジメント227号
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36大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングといった座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長及び改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索するなか、様々な取り組み事例を積極的に紹介していきたい。今回は、地方の小規模私立大学として教育力強化に取り組み続ける美作大学で、鵜﨑実学長にお話を伺った。美作大学が立地するのは岡山市からJRで1時間40分ほどの津山市。鵜﨑学長は「しかも津山線は1時間に1本程度。中国山地の“陸の孤島”」と言う。とても周辺地域からだけでは入学定員を満たせない。県内でも岡山市等の人口密集地域は自宅通学圏外でつ国公立大学の実績を上回ることを意味する。例えば、社会福祉士や管理栄養士の国家試験合格率は、全国の国公立大学の平均を上回っている。戦略2は、専門職への就職率ならびに故郷(出身県)へのUターン就職の実現。「ふるさとに戻すという、地方人材の育成をコンセプトにしています。Uターン就職率を高めるために、全学を挙げて教員が就職開拓訪問を行い、高知、島根、鳥取、愛媛の各県との就職開拓協定も締結しています」。また、資格取得に必須の学外実習・臨地実習を、学生の出身県で実施する取り組みも行っている。しかも、高知県、沖縄県といった遠方でも、その実習先まで教員が実習指導に赴くという手厚さだ。戦略3が、「個々の学生に寄り添う面倒見の良い学生指導」。「教員が学生の相談に応じる『オフィスアワー』を文科省が推奨したことがありましたが、本学ではそんなものは必要ない。学生はいつ教員のところに来てもいいのです」。退学率が年間1.6%と全国平均2.7%に比べて低いことも、「面倒見の良さの見える化」だと鵜﨑学長は言う。戦略4は、広報宣伝による知名度のアップで、これらの結果、「教育の美作」と評判を呼ぶようになってきた。あるため、地域外からの学生を積極的に募集し、約75%が県外出身者となっている。美作学園の沿革をたどれば、1915年(大正4年)に裁縫技術者・小学校裁縫教員養成を目的として設立された津山高等裁縫学校に行きつく。その後、1951年に短大、1967年に大学を設置。2003年に共学化して現名称となり、現在は、生活科学部1学部3学科(食物学科、児童学科、社会福祉学科)に約900名の学生が在籍している。管理栄養士、社会福祉士、保育士、小学校教員、介護福祉士等、地方社会の暮らしを支える人材育成に特化した大学として、「食」「子ども」「福祉」の3つの分野で活躍するスペシャリストの育成に力を注いでいる。他県(地元以外)からの学生募集を成功させる基本戦略として、次の4つの取り組みを行ってきたと鵜﨑学長は説明する。戦略1は、圧倒的な教育力を持つこと。「圧倒的」とは、類似する学科を持リクルート カレッジマネジメント227 / Mar. - Apr. 202130美作大学県外から学生が集う教育力にこだわる地方小規模大学鵜﨑 実 学長中国山地の“陸の孤島”でスペシャリストを養成徹底的な教育力で他県から学生を募集

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