38リクルート カレッジマネジメント227 / Mar. - Apr. 2021う。「先輩の声は、自分の明日なんですね。自分も明日の姿をイメージしながらいますので、教員が語りかけるより格段に説得力が高い。伝えることは、地域の人達の健康であるとか、あるいは福祉のサービスをいかに届けるかというような、仕事に臨む思いがまず一つ。もう一つは、大学の学びがどう今につながっているのか。1年生の時から『先輩講話』を比較的多く、なるべく全体に取り入れるようになっています」。美作大学が、社会福祉士、管理栄養士等の資格取得対策を本格的に始めたのは15年ほど前だ。「資格対策」というと、外部に委託する大学も多いなか、美作大学はそれとは異なり、大学の教員が1年生から4年生まで対応している。「管理栄養士なら管理栄養士の学びは、1年生から始まっている。国家試験に合格するための学びは、その延長線」という考えからだ。例えば福祉がいかにこの世の中に求められているかの理念を1年生2年生に教え込むのも教員であり、4年生になって試験に合格させる責任を持つのも教員だ。「現場経験のある教員に教え込まれた理念は根っこになり、幹となる。学生達がグループ学習でお互い学び合うことで、枝葉が伸び、大きな茂みを作っていく」と鵜﨑学長は表現する。共に試験に臨む仲間だけでなく、先輩の役割も大きい。「先輩講話は1年生にも行っていますが、4年生への講話になると、国家試験のこの時期は何を勉強していた、模擬テストの点数はまだ5割台だった、焦っていたというグラフまで出てきます。そういう生の話を先輩から聞くと、すごい刺激を受けるんですよ」。こうした指導は合格率だけでなく、高得点での合格にもつながっている。以前は合格ラインの6割ギリギリの合格がほとんどだったが、近年は平均点が8割近いという。「人の体を預かる仕事が、7割とか6割でいいと思ってるの、8割取らなかったらプロにはなれませんよという話を学生にぶつけるようになった。結果、ギリギリ合格はなくなりました」(鵜﨑学長)。とはいえ、国家資格の取得課程には多くの条件があり、自由度が低い。美作大学のカリキュラムも、他大学と大きな違いはない。だとすれば、入学者の学力に幅のある美作大学が、卒業時には国公立を上回る成果をあげている秘訣は何なのか。「それが知りたいとよく聞かれますが、結論は『まねできるものではない』。やはり、教員と学生との距離と、学生間の密なる距離なのです。人間関係が形成されているということです」。地方小規模大学ならではの強みを活かして教育成果を上げてきた美作大学だが、今後の課題や抱負もまた、地方の小規模私立大学が生き残れる方法の模索につきると鵜﨑学長は言う。「地方は要するに官尊民卑です。少子高齢化に向かい、地方の18歳人口がますます減っていくなかで、国立大学は収容定員を減らさない。さらに、公立大学の新設ならびに定員増が進行している。どうなるかというと、わずかな私学進学者を私学が奪い合っている。これはもっと顕著になっていくでしょう。そうなればつぶれるしかない。公財政補助も官民で大きな差があり、現行制度においては、公立化しか選択肢がないということにもなりかねません」と鵜﨑学長は危機感を募らせる。「だから、どういう手があるか地域の人と一緒に考えていかなければ。地域が設立した経緯から特定のオーナーのいないこの大学を、地域の人達がどのように守っていくのかという話を、公立化の議論も含めてしている最中ですが、なかなか難しくて」。官尊民卑の風土が追い打ちをかけ、地域活性化でも国立の岡山大学を頼ろうとしがちで、地元私立の美作大学を活用する発想になかなかならないのも、悩みの種という。そして大学それぞれに地域貢献の役割に違いがあって、それを活かしてもらいたいという。鵜﨑学長は、「困難な課題を抱えており、その解決に工夫が必要な地方こそが、国際的な広い視野を持って社会に貢献できる人材を育成する必要がある」と、グローバルにも目を向ける。その観点から2018年、津山工業高等専門学校と共同で、世界の共通目標SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて取り組むことを宣言した。鵜﨑学長は、「地方の人材を育てるとはなんぞやということが背後にはあります」と話をしめくくった。資格取得対策は委託せず、理念を1年生から津山高専と共同で社会課題にチャレンジ(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)
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