カレッジマネジメント227号
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43期的なビジョンを踏まえながら、安定的なリーダーシップを発揮できるよう、それぞれに適した年数の任期を設定すべきである」としている。言うまでもなく、学長選考会議がその権限と責任において学長予定者を最終的に決定することは法の定めるところであり、再任回数の上限撤廃や意向投票の廃止も、国の政策に沿ったものといえる。憲法が保障する学問の自由は当然守られねばならない。そのうえで、大学が果たすべき使命と学問の多様性を十分に理解しつつ、教育研究環境を整え、大学をより良き方向に導くことのできる学長をどうすれば選ぶことができるかが、学長選考をめぐる問題の本質である。文部科学省・内閣府・国立大学協会の三者連名で2020年3月に公表された「国立大学法人ガバナンス・コード」は、法人の長の責務として、①中長期ビジョンの策定と法人の教職員へのビジョンの説明及び共有②法人の長のリーダーシップ(教育研究の成果の最大化、多様な関係者の意見・期待を踏まえた法人経営)③ビジョン実現のための執行体制の整備(補佐人材の選任・配置、経営人材の計画的な育成・確保)④ビジョン実現のための戦略的な資源配分(教育・研究・社会貢献機能を最大化するための戦略的な資源配分と成果の適切な検証)の4つを挙げている。法人化前の選挙や法人化後の意向投票でこのような責務を果たしうる人材が選ばれる保証はない。学長選考に構成員の多様な考えや価値観が反映されることは大切だが、同時に、今日の状況においてどのようなリーダーが求められるかを十分に話し合い、学長像を共有したうえで、候補者を探し、厳しく見極めていかなければならない。一方で、学長選考会議にも課題はある。学内のみならず広く学外ないしはステークホルダーの視点や意向を重視するという点で、経営協議会から選出される学外委員の役割は大きいが、大学の経営に触れる機会は年4回から5回程度開催される経営協議会だけであり、筆者の経験でもその場で厳しい議論が展開されることは稀である。選考を行ううえで必要となる情報をどう得るか、経営協議会のあり方を含めて検討が必要である。学外委員に関するもう一つの課題は、大学の使命・目的、教育研究、組織特性等に対する一定の理解が必要という点である。その意味からも、学長選考プロセスに入る前の段階において、学外委員と学内委員との間で率直な意見交換を重ねておく必要がある。学長選考会議による選考が法で定められている国立大学法人や公立大学法人においても、意向投票の有無をはじめ具体的な選考方法が大学間で異なるが、法による定めのない私立大学の学長選考方法はさらに多様である。日本私立学校振興・共済事業団が2018年4月に行った調査によると、学長選挙を実施している大学は31.8%、残りの68.2%は実施していない。また、学長の選出に最も影響を与えるものを問うた質問に対する回答は、理事会による選出40.2%、選考委員会による選出33.1%、選挙による選出19.7%、その他6.9%となっている(同事業団「学校法人の経営改善方策に関するアンケート」報告,2019.3)。国の補助事業に数多く採択され、それを梃子に改革を加速させ、ブランド力の向上や志願者の増加を実現してきた芝浦工業大学の変革はガバナンス改革から始まったと言われている。同大学もかつては学長を選挙で選んでいたが、選挙の度に学内が二分され、終わった後もしこりが残ったという。そのことを問題視した理事長が学長選挙の廃止を決断し、学長選考委員会が選出した候補者を理事会が決定する方式に変更した。その後、副学長、学部長、研究科長についても、選挙による選任から学長が指名する候補者を理事会が承認する方式に変更された。東京大学大学院の両角亜希子准教授は「一連の改革で、理事長、理事会と学長の連帯感が強まり、学長付託型の大学運営を実現し、学長の下、教育研究の一貫した意思決定ラインが形成され、大学改革を迅速かつ適切に展開する環境が整ったと言える」(両角亜希子「ガバナンス改革と教職協働でスピーディーな改革を実現」本誌No.212,2018.7-8)と評価する。リクルート カレッジマネジメント227 / Mar. - Apr. 2021顕著な成果で注目される芝浦工大の変革はガバナンス改革から始まった

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