カレッジマネジメント227号
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44リクルート カレッジマネジメント227 / Mar. - Apr. 2021学長が主導する改革への要請が強まるにつれて、学長選考の実質的な主体は、選挙や意向投票から理事会や学長選考会議に移っていくものと思われる。ただ、主体が変われば優れた学長が選ばれると言えるほど単純ではない。米国の大学では、州立・私立を問わず学長選考は理事会の最も重要な役割の一つである。理事の一部と多様なステークホルダーの代表で構成される学長選考委員会が、全米または全世界から人材情報を広く集め、これらの情報を基に絞り込んだ数名の候補者に対して面接を行い、理事会に推薦する候補者を選定、理事会が最終決定するというプロセスが知られている。面接と併せて教員や学生との対話の場を設定することもあるという。日本では内部昇格の学長が多くを占めるのに対して、米国ではその逆に多くの学長が外部からの招聘である。この点は、日米間で経営者の流動性に大きな差がある企業社会と共通している。内部昇格か外部招聘かについては一概にどちらが望ましいと言えるものではない。日米問わず、大学を率いるにふさわしい能力を備えた人材が学内で得られるならば、学内事情に精通している分、優れた手腕の発揮を期待できる可能性も高い。その一方で、大学の規模によっては人材が限られてくる場合もあるし、外部の風を入れることが変革の加速につながることもあろう。その場合、外部人材に関する情報をどう集め、如何なる方法や選考基準で候補者を絞り込んでいくかは、日本の大学の理事会や学長選考会議の現状を踏まえると、極めて難しい問題であると言わざるを得ない。主体となるべきは選挙か理事会か、意向投票か学長選考会議かといった形にばかりとらわれた議論から脱し、学問の発展と社会の要請を踏まえ、大学は何を目指し、どう運営されるべきか、それを主導する学長には如何なる役割が求められ、それにふさわしい人材をどうすれば選び出すことができるかといった議論を深め、学長選考をより成熟した次元に引き上げていく必要がある。また、再任回数については、上限を撤廃するならば、併せて理事会や学長選考会議の学長に対する監督機能を強めるとともに、客観的な状況から職務継続が適当でないと認めるときは解任(または任命権者に対する解任の申出)を行える仕組みを整えておく必要がある。ここまで学長選考について考えてきたが、大学を率いるにふさわしいトップマネジメント人材をどう育成するかも極めて重要なテーマである。「経験を通した学習」と「自学や受講を通した学習」の両方が必要なことは大学のトップ人材育成においても変わらない。前者については、副学長・学長補佐や学部長・研究科長といった役職経験、研究プロジェクトを率いた経験などがそれに当たる。米国では高等教育機関外での職務経験を有する学長も少なくないという。後者に関しては、自身の専門分野を超えた知的好奇心に加え、世界や社会の動き、政策の動向、マネジメントなどに対する幅広い関心を背景に、自ら学ぶ姿勢を持ち続けることが大切である。スタンフォード大学で16年にわたり学長を務めてきたジョン・L・ヘネシー名誉学長は著書のなかで「優れたリーダーでいるためには、絶え間なく学び続けなければならないのだ」と述べる。自身の仕事が工学部から大学全体に及ぶようになった頃、自分の無知を思い知り、読書量を2倍に増やして、ほとんど知識を持たない数分野を探究するとともに、リーダーシップという新しい役割に読書の焦点を合わせたという(ジョン・L・ヘネシー(瀧口範子訳)『スタンフォード大学名誉学長が教える本物のリーダーが大切にすること』ダイヤモンド社,2020)。このような自学自習の契機となり、水先案内となるような研修機会を整えることも今後の大きな課題である。大学団体等による個別大学を超えた取り組みが求められる。国立大学協会では、大学改革を主導するリーダー人材の優れたリーダーは絶え間なく学び続けなければならない個別大学の枠を超えた研修機会の提供も今後の大きな課題学長選考をより成熟した次元に引き上げていく必要がある

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