カレッジマネジメント227号
6/50

6リクルート カレッジマネジメント227 / Mar. - Apr. 2021本稿では、コロナ禍でも学生の学びと成長を止めないための新しい学生支援のあり方について検討を行う。今回のコロナ禍で大学が検討すべき領域は、正課教育(遠隔授業)と準正課・課外活動(学生支援)に大別される。遠隔授業のあり方については既に多くの議論があり、今回のテーマの中心ではないが、学生支援の問題を考えるうえでも関連性があり、一定の整理が必要と考える。具体的には、まず、遠隔授業の一斉導入とそこで生じた課題について取り上げる。次に、学生の学びと成長において大学という空間、大学生活という時間の持つ意義について述べる。そして、遠隔授業で生じた課題解決と大学の意義とを繋ぐ重要な概念として、学生エンゲージメントを紹介する。最後に、それらを具体化するためのニューノーマル時代の学生支援のあり方について提案する。2020年に入り、新型コロナウイルス(COVID-19)の国内発生及び感染拡大を受け、多くの大学では前期は遠隔授業を中心に、後期は遠隔授業と対面授業を併用する形で教育活動が展開されている(文部科学省、図)。十分な準備期間を取ることができない緊急対応型遠隔授業(Emergency Remote Teaching)として、遠隔授業(大きくは、LMSを活用した教材提示型、授業動画(映像・音声)を撮影し共有するオンデマンド型、ビデオ会議システムを活用した同時双方向型の3タイプ)が選択・導入された。多くの大学では学生調査も実施され、遠隔授業に対する一定の肯定的なフィードバックを得た。例えば、オンデマンド型授業の「場所・時間を問わず、自分のペースで学べる、予習・復習がしやすい」といった利点は、とりわけ知識習得を目的とした知識伝達型の授業と相性が良く、今後の活用も期待できる。学生の学びを止めないための遠隔授業への挑戦は一定の功を奏したと言える。他方で、学生から見たときの学びの継続性に関わる重要な課題も見えてきた。一つは学習意欲の維持、今一つはメンタルヘルスの不調である。学習意欲の維持については、学ぶ場所や(教材提示型やオンデマンド型の場合は)学ぶ時間が学生個人に委ねられるため、対面時以上に学習への強い動機づけや自己調整学習力がないと継続することが難しい。各種学生調査において、「集中力が続かない」「学習のペースがつかみにくい」といった学習の継続性に関する困難を挙寄 稿関西大学教育推進部教授山田剛史1977年大阪生まれ。神戸大学博士(学術)。専門は、教育開発と人材育成。島根大学教育開発センター講師・准教授、愛媛大学教育企画室准教授、京都大学高等教育研究開発推進センター准教授を経て、2020年10月より現職。未曾有の状況下での遠隔授業への挑戦遠隔授業の成功と解決すべき課題学生の学びと成長を止めないニューノーマル時代の学生支援

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る