カレッジマネジメント227号
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9リクルート カレッジマネジメント227 / Mar. - Apr. 2021ほうが多くなっている。今後さらに厳しい状況が訪れることも想定して、教育・学生支援双方を含む大学全体での取り組みが求められる。以上のことを鑑みて、筆者は、ニューノーマルの時代に求められる教育・学生支援において、最も重要なキーワードは「関わりを止めない」「つながりを切らない」ことだと考える。教育面では、同時双方向型におけるアクティブラーニングや、教材提示型・オンデマンド型コンテンツを活用した反転学習の推進等が期待される。そのことによって、「個別最適な学び」と「協働的な学び」(中央教育審議会、2020)の実現が可能となる。学生支援においては、より一層ピア・サポートの推進が期待される。今回のコロナ禍で、改めて情緒的なエンゲージメントの重要性が浮き彫りとなり、仲間同士での関わり合いやつながりを軸とするピア・サポートは効果的と言える。既に、新入生を対象としたオリエンテーションや学習支援等を、オンラインを活用したピア・サポートによって実施している大学もみられる。ほかの支援領域においても、オンラインという選択肢ができたことの意義は大きい。例えば、キャリア支援においては、都市部と地方との地域間格差の問題も解消できる可能性を秘めており、物理的に難しかった卒業生と在学生との交流等も容易になるだろう。国を越える留学や留学生支援においても、身体性を伴う体験に勝るものではないが、オンラインの活用によってより容易に異文化交流が可能となる。留学を必修に掲げる大学も増え、それを望んで入学してきた学生達は、休学や退学という選択肢を取りかねず、緊急性の高い課題の1つである。障害学生支援においても、物理的に通学が困難な学生や精神的な理由で不登校の学生、直接面と向かって話すことが難しい学生達にとって、オンラインを活用した面談は有効な方法になりえる。ただし、こうした取り組みを行うためには、従来の教職員スタッフだけでは困難である。上述したピア・サポートの活用や、コーディネーターやアドバイザー等新たな専門スタッフの創出・雇用、円滑な業務を可能にするための情報基盤(プラットフォーム)の強化等、これまで以上に需要が高まる学生支援を組織的に支える大学の戦略と対応が必要不可欠となる。教育にせよ、学生支援にせよ、情報発信(教材提示・動画配信)等一方向的な伝達に終わらせず、対面に比べて交換・感受できる情報に限りがあるオンラインであったとしても、双方向的なコミュニケーション(関わりやつながり)を確保することが極めて重要である。他者との関わりやつながりによって、学生は学び成長し続けることができるのである。オンラインという新たな道具を得たとしても、そのことは変わらず大学の価値になると信じている。特集 ニューノーマルの学生支援

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