カレッジマネジメント228号
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13リクルート カレッジマネジメント228 / May - Jun. 2021ポイントまで広がっている。三大都市圏の充足率が下降した要因として、定員管理の厳格化の影響が考えられる。三大都市圏では2020年度の入学定員をみると2015年度に比べ6.5%増加しているのに対し、入学者数は、定員管理の厳格化の対象となった入学定員1,000人以上の大学が入学者数を抑え、全体で1.6%の増加に留まったことが、充足率の下降につながったと考えられる。一方、定員管理の厳格化の影響が少ない地方では、2020年度の入学定員は、2015年度に比べ3.8%増加しているのに対し、入学者数は全体で10.0%増加しており、充足率の上昇につながったと考えられる(図表4)。図表5は、私立大学の地域別の充足状況を、学校の所在地により、21の区分に分けて、2015年度と2020年度を比較したものである。入学定員充足率が上昇したのは全国で15地域あるが、地方は13地域中12地域が上昇している。上昇した15地域の上位をみると東北10.74ポイント、東海9.56ポイント、北海道9.35ポイントと全て地方となっている。地方の充足率が上昇した結果、2015年度において充足率が100%以上の地域は5地域であったものが、2020年度では10地域まで増えている。一方、三大都市圏に該当する地域では、京都を除く7地域で充足率100%以上を維持しているものの、8地域のうち5地域が下降している。特に、東京(▲8.82ポイント)、京都(▲7.48ポイント)、愛知(▲2.56ポイント)で下降幅が大きくなっている。図表6は、学部所在地が地方(三大都市圏以外)である学部について系統別に13区分し、2015年度と2020年度の入学定員充足率と入学者数の関係をまとめたものである(系統別の入学定員充足状況の詳細についてはP.15以降に参考として記載している)。A:充足率が上昇、入学者数も増加したグループ人文科学、社会科学、芸術系の3系統が該当した。これら3区分の充足率は、100%未満から100%以上に改善している。人文科学、社会科学系は、一般企業や官公庁に就職する際に有用な知識を学ぶ学部が多いためと考えられる。芸術系は、充足率が低かったこともあるが、創作活動等を通じて培った創造力、表現力、クリエイティブな思考力等が、卒業後において社会で活かされる場が多くなったことで受験生を中心に魅力が高まり、入学者数の増加につながったと考えられる。B:充足率は上昇したが入学者数が減少したグループ理・工学系、その他の2系統が該当した。両系統とも学部数の減少により入学定員が減少したが、入学者の減少数が入学定員の減少数より少なかったため、充足率は上昇している。C:充足率は下降したが入学者数は増加したグループ医学、保健系、農学系、教育学、体育学、家政学の6系統が該当した。これらの系統の多くは資格取得が可能な学部が多く、入学者を安定的に確保する要因となっていることから学部数が増えたことに伴い入学定員も増えているが、入学定員の増加分まで入図表6 地方大学・系統別の入学者増減と入学定員充足率の上昇下降の関係図(2020年度─2015年度)〔学部所在地ごとに集計〕区分入 学 者増 加減 少入学定員充足率上昇A  人文科学系   社会科学系   芸術系B  理・工学系   その他下降C  医学   保健系   農学系  教育学   体育学  家政学 D  歯学   薬学12の地方地域で充足率が上昇充足率100%以上の地方地域は5→10 地域別の動向2地方は、人文科学系、社会科学系が強い学部系統の動向特集 地方大学の新たな選択肢(2)地方大学 2021年の現在地を確認する※ 入学定員充足率 = 各系統ごとの入学者合計 ÷ 各系統ごとの入学定員合計※ 青字 …入学定員充足率が、2015年度:100%未満→2020年度:100%以上※ 赤字 …入学定員充足率が、2015年度:100%以上→2020年度:100%未満※ 赤字 …入学定員充足率が2015・2020年度共に100%未満※ 黒字 …入学定員充足率が2015・2020年度共に100%以上

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