カレッジマネジメント228号
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技術革新により、産業構造や働き方が劇的に変化することが予想されます。本連載では、領域×Technology=「X Tech(クロス・テック)」に着目し、産業の大きな変化の兆しを捉えていきます。取材協力金子亮太氏 野村総合研究所 ICT メディアコンサルティング部 主任コンサルタント#13 Real Estate Tech(不動産とテクノロジー)コロナ禍で加速。業界変革を促した「不動産テック」の功績で変わる産業新型コロナウイルス拡大でビジネスや生活様式のデジタル化が加速している。野村総合研究所(NRI)が発表した『ITナビゲーター2021年版』によると、2020年度の市場成長率は67%の増加、2026年には2512億円にまで拡大すると予測されている。広義の不動産テックは不動産情報メディアやマッチングサイト、シェアリングサービス、IoT機器活用サービス等、不動産に関するあらゆるテック領域を含む。だが今回の調査は、生活者不動産領域を対象とし、「不動産情報収集」「バックオフィス業務」「営業業務」「AI・ビッグデータ等を活用した価格査定」「VR/ARを活用した内見」等、不動産仲介事業のBtoBサービスに絞っている。それでも圧倒的な成長率である。なかでも金子氏が特に注目しているのは、バックオフィスのクラウド化、RPA(業務自動化)、CRM(顧客管理)等の業務効率化サービスだ。「コロナ禍において、不動産仲介事業者を主なサービス提供対象とする不動産テックが伸びた理由は大きく二つあります。一つはリアル店舗での営業が困難になり、ITを活用した非対面接客を余儀なくされたこと。もう一つは、アナログで保守的だった不動産業界が、ITシステムやツールの利便性に目を向け始めたことで、事業継続のために必要なデジタル+αの導入が進み、長時間労働の改善や生産性向上等の業務効率化に繋がったことが挙げられます」国土交通省の「IT重説」(ITを使った重要事項説明)に対する取り組みも開始され、契約書の電子化等の本格運用も進んでいる。また、グローバル化の加速、技術革新、地球環境の変化などに伴い、「勘と経験と度胸」に頼るアナログな攻め方だけでは勝てない時代になってきた。業界の常識や慣例に縛られず、新しい感性と独自性を活かした課題想起力、データで分析できる冷静さ、改善に結び付けるアクティブさが求められると強調する金子氏。「これからは異分野の知識やITスキルを持ったイノベーターが重宝されます。例えば、業界外のバリューチェーンからヒントを得て、新たなビジネスモデルを作ってしまうようなアナロジー思考を持った人材ですね。日頃からマーケットのニーズや数字に広く興味関心を持ち、何が課題なのか、自分だったらどう解決するか等の方法を考える癖をつけておくといいでしょう」テクノロジーによる進化の余地が数多く残されていながらも、デジタルを活用した新しい取り組みも注目される不動産業界。さらに業界変革を促し、多様なビジネスモデルを創出する人材創出にも期待が高まっているようだ。(文/馬場美由紀)05001000150020002500300020262025202420232022202120202019(年)(億円)10821806189422022286236624412512日本における不動産テック(生活者不動産)市場規模予測出典:野村総合研究所 「ITナビゲーター2021年版」のデータをもとにリクルート『カレッジマネジメント』が作成1972504030201001982199220002020不動産情報サービスのデジタル化不動産契約のオンライン化AIによる不動産査定VR・3D画像による物件内見オンライン営業

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