22リクルート カレッジマネジメント228 / May - Jun. 2021新型コロナウイルス感染症による人口減少スピードの加速化やデジタルトランスフォーメーションの急激な進展により、地方大学もグローバル競争にさらされることとなり、大学の存続に関わり得るような極めて重大な局面を迎えつつある。こうした危機感の下、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局では、昨年「地方創生に資する魅力ある地方大学の実現に向けた検討会議」(座長:坂根正弘 コマツ顧問)を立ち上げ、地方創生に資する魅力的な地方大学を実現するという観点から、地方大学が目指すべき方向性と国における対応について闊達な議論を行っている。その内容について、昨年12月22日に取りまとめが行われたところであり、ポイントは次ページの表の通りだが、本稿ではその内容をもとに、地方大学への期待と、地方創生に資する魅力ある地方大学の実現に向けた方策についてご紹介したい。なお、本検討会議において「地方大学」とは、「東京圏以外に所在し、地方創生への貢献をそのミッションとする大学」を指すものと定義している。地域の教育・研究拠点でもある大学は、地域に相当なインパクトを与えており、大学が地域から消えるということは、地域から若者や教職員が消え、彼らにまつわる消費や雇用が失われることを意味する。また、大学という「知の拠点」を失うことは、地域の経済的・社会的価値を成長させていくための重要な存在を失うことにつながる。このように、大学の存続は地域全体の課題であり、大学の将来に係る危機感を、大学だけではなく、首長をはじめとする関係者が強く認識し、具体的なアクションにつなげていくことが求められている。理想的には、地方創生への貢献を大学のミッションとして掲げる全ての地方大学が、魅力的な存在になり地方創生に資する大学として成長することが望まれるが、まずは、地方創生に資する大学として本当に変わろうとする大学、あるいは個別の大学の中で特区的にでも地方創生に資する改革を進める主体を見いだし、改革をサポートすることで、地方創生に資する地方大学づくりを先導していくことが提言された。地方創生に資する地方大学のモデルとなる事例をスピード感を持って生み出し、その成果を他の地方大学に波及させていくことにより、地方への若者の流れを促していきたいと考えている。地方創生に資する魅力的な地方大学とは、その魅力故に学生を惹きつけ、学生の将来の活躍の場としてワクワクするような産業・雇用を創出し、地域における人の好循環を生み出すハブとして機能する大学である。こうした地方大学の実現に向け、地方大学が目指すべき方向性として以下の3点が示されている。今後の18歳人口減により、大学の置かれている状況がより厳しくなることが想像に難くない。本検討会議においては、2030年には定員500人規模の中堅大学が160校消滅する可能性があるといった試算も紹介された。こうした状況も踏まえ、他大学との差別化に徹底的に取り組み、各大学の内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長行松泰弘地方大学が迎えている重大な局面地方創生に資する地方大学が目指すべき方向性①ニーズオリエンテッドな大学改革(2)地方大学 2021年の現在地を確認する地方創生に資する魅力ある地方大学の実現に向けて寄 稿
元のページ ../index.html#22