24リクルート カレッジマネジメント228 / May - Jun. 2021外の実践的な課題に触れることで、いわゆる「文理融合」の可能性や必要性に学生が気づき、学ぶことの意義は非常に大きく、STEAM教育を契機に、産業連携を進めることも考えられる。各大学が時代に応じた教育研究を行っていくためには、民間の力の活用や、国公私を超えた大学連携が必要となる。今後の18歳人口減を踏まえれば、大学は厳しい競争関係にさらされていく可能性が高いが、「地域連携プラットフォーム」の構築や「大学等連携推進法人」の導入等により、協働関係を築いていくことが求められる。大学が直面する今後の厳しい状況を見据え、強みを伸ばすことだけが求められるのではなく、スクラップが必要になってくる。スピードの速い社会の変化に対応し、組織の新陳代謝を促すためには、一定の痛みを伴う真の改革に乗り出すトップの覚悟が欠かせない。そして、この覚悟を学内に浸透させることが必要不可欠であり、多様な専門性を持つ教員が同じ方向を向いて改革に取り組むためのマネジメント面での工夫も求められる。また、社会の変化やニーズを適切に捉えるためにも、教員や経営陣として民間人材を積極的に登用することが効果的と考えられる。その際、能力や成果に応じた待遇という価値観を臆せず取り入れ、民間からの教員に対し高い給与を支払う前提でのクロスアポイントを進めることも新たなチャレンジを促す重要なインセンティブとなるだろう。本検討会議では、本質的な大学改革が進んでいない理由として、学部・学科間の横並び意識に基づく「悪平等」も指摘された。「悪平等」から脱却し、まずは特色的な改革を部分的に着手しながら、その改革マインドを全学に波及させる工夫を施すことで、大学内の事情に偏った大学改革とは一線を画した、真の改革を期待したい。また、「教員ガバナンス」によった学長選考プロセスを早急に見直すことも指摘されている。本検討会議の検討事項の一つとして、地方国立大学の定員増が挙げられる。これまでの運用においては、国立大学の定員を増加させることは認められておらず、組織改革を行う場合にも大学内でのスクラップ&ビルドを前提に進めなければならなかったが、これがともすると旧来組織の看板の架け替えにとどまってしまう大きな要因ではないかとの指摘もあった。このため、地方創生に資するかどうかなど、適切に審査・選定を行った上で、特例的に地方国立大学の定員増を認めるべきとの考え方が示された。かかる定員増は、地方大学がこれまで述べてきたような様々な改革を進めた上で、さらに魅力ある大学となるための手段の一つであるが、18歳人口減の傾向も踏まえ、極めて限定的に、特例として認められるに相応しいプランに基づくものでなければならないとされたことに注意が必要である。具体的な審査の流れについては、以下の図に示した通りであり、文部科学省と内閣官房が連携しながら、特例的な定員増に関する審査・選定を進めていくことにしている。地方国立大学の定員増の要件については、中央教育審議会における議論を踏まえ、文部科学省と連携しながら、今後詳細について検討を進め、早急に各大学に対してお示ししたいと考えている。各地方国立大学において、地方公共団体等のステークホルダーとも連携しながら、各大学・地域の創意工夫がいかんなく発揮された、真に地方創生に資する定員増のプランを練り上げ、申請いただけることを期待したい。国においても、これを価値あるものとするよう、厳正に、そして本気で審査を行ってまいりたい。また、本検討会議においては、定員増を伴う改革については、・従来の運営費交付金とは切り分けて質の高い教育・研究を行うために必要な経常的支援を行うべきであること・大学にミッションや5年程度の目標を明示させたうえで、中長期的に大学側に大きな裁量権を与えるとともに、結果責任を問うような、包括的で結果管理型の契約的な考え方を取り入れるべきであること等が提言されている。裏返せば、こうした結果管理型の長期契約的コミットメントに耐えられるだけの意志と能力とガバナンスを持った地方大学こそが、定員増を認めるに相応しいと考えている。地方国立大学における特例的定員増③大学改革を実現するためのガバナンス改革
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