カレッジマネジメント228号
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27リクルート カレッジマネジメント228 / May - Jun. 2021考し、物事を多面的に見て考える人を育てることを目指したのです」と山下理事長。14年に設置された教育学部においても同様で、全ての授業形態をアクティブ・ラーニングとし、クリティカル・シンキングも取り入れながら、小学校教諭、幼稚園教諭、保育士養成に取り組んでいる。そして、この教育手法を加速させたのが、「大学教育再生加速プログラム(以下AP)」への挑戦だった。テーマI「アクティブ・ラーニング」とテーマⅡ「学修成果の可視化」の「複合型」カテゴリーにおいて採択を受け、14年から19年にかけて、クリティカル・シンキングと英語スキル向上の可視化を行い、これらの修得を最大化させるアクティブ・ラーニング手法の開発と実践、および体系化に取り組んだ。複合型に応募した背景として、山下理事長は「創設以来続けてきたアクティブ・ラーニングが学修成果への効果があるのか、その有無を測定し、明確化することに挑戦したかった」と話す。6年間の取り組みの結果、これまで手掛けてきたアクティブ・ラーニングの類型化や、クリティカル・シンキングを測定する独自ツール(テスト)の開発等に成功。最終年度の2019年度に卒業した学生には、学修成果の証として、e-ポートフォリオをデータ化した学修成果の一覧「ディプロマサプリメント」を成績一覧とともに渡すに至った。さらに、学生の学修においても、TOEIC®Testのスコアやクリティカル・シンキングテストのスコアが向上。「全授業をアクティブ・ラーニングで実施することの成果が明確になった」と山下理事長は振り返る。「思考力を高める場合、プレゼンテーション能力を高める場合等、目的に応じたアクティブ・ラーニングの手法を類型化し、学内で共有できたことが最大の成果です。また、学修成果の可視化方法を検討する過程で、測定ツールは様々に用意できるし、アセスメントポリシーに基づいて多面的に評価していくことが大事だと気づけたのも収穫でした」。また、コロナ禍でのオンライン授業への迅速な切り替えという副次的な効果も生み出した。「対面授業中止の決定から2週間で、オンライン授業、しかも、アクティブ・ラーニングによる双方向授業に切り替えられました。これは、APの取り組みのなかで必要な機器を揃えられていたこと、また、アクティブ・ラーニングの手法を全教員が既に実践できるようになっていたからこそです」と山下理事長。APは終了したが、今後も可視化の質やツールの検証を続けていくという。これらの取り組みを経て、長年苦労してきた定員充足という課題も改善。ここ数年、毎年、過去最多の受験者数を記録している。「教員間では、『やっと時代が追いついてきたね』という話がよく挙がっている」と山下理事長は話す。「設立当初は『英語でリベラル・アーツ』という考え方が先進的過ぎて地域での理解が進まず、定員を充足できない時期が長く続きました。それが今、文部科学省がクリティカル・シンキングの重要性を謳い、アクティブ・ラーニングを推奨するようになったこともあり、県内の高校の先生方が注目してくださり、本学が高校生向けに行っている1日体験入学「ENGLISH DAY」や、高校への出前授業等への申し込みが大幅に増えています。その機会が高校生の認知のきっかけになり、受験生増につながっています」。今後はさらに、地域との連携を深めながら教育の質を高めていくという。これからの地方大学のあり方として、「個々の大学の特長や良さ、できることをより尖らせることが重要ではないか」と山下理事長は話す。「本学では、グローバル教育と教員養成をより良くすることを追究していくことが、私たちに課せられた課題だと認識しています。そのためには、教職員が『目の前の学生が育つ教育とは何か?』ということを検証し続けることが重要。教職員が学び合える集団となること、さらには、地域の様々な企業や人と連携交流しながら学生の学びを深め、地域と一体となって育てていくことを目指していきたいと思います」。今後、宮崎国際大学からどのような人材がグローバル社会に輩出されるか楽しみだ。(文/浅田夕香)アクティブ・ラーニングの類型化と学修成果の測定方法の開発に挑戦実践する教育と時代のニーズがマッチした特集 地方大学の新たな選択肢

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