28リクルート カレッジマネジメント228 / May - Jun. 2021長岡大学は新潟県長岡市に2001年開学し、経済経営学部に1学科5コースを擁する小規模大学である。文部科学省「地(知)の拠点整備事業(COC)」に2013年採択された「長岡地域<創造人材>養成プログラム」が5年間実施され、並行して2016年には後継となる「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」に採択された「NIIGATA COC+」(新潟県内の就職率向上と国内外からの人口流入実現を目指す地方創生事業)の参加校となっている。「地域で役に立ち、頼りになる大学」を目指す大学創りについて、村山光博学長にお話を伺った。まず、COC事業を概観したい(図)。長岡市は2005~2010年に11市町村が合併した新潟県第二の都市である。主要産業は機械工業や食品製造、農業等だが、グローバル化の進展に伴い競争相手が国内のみならず海外にも拡大し、競争劣位な状況が続いている。また、合併したことで中山間地域から市街地、海岸まで包含する自治体となり、広範な市はエリアごとに特徴も環境も人口分布も、当然課題感も多様だ。その中から大学の介在価値を発揮できる3点を選び、その打ち手を講じた。課題について詳細を見ておこう。まず、「産業活性化」である。苦戦する産業の構造改革のみならず、産業を牽引する人材育成、起業・創業の促進まで、スコープは広い。新潟県は起業も廃業も少なく、産業の新陳代謝が悪い。外部環境が変化する中でよりイノベーティブな風土醸成が必要であり、経済経営学単科の大学としても、学んだ内容で事業を興す学生や社会人の循環拠点となる必要があった。次に、「市民協働」である。少子高齢化、過疎化に伴う諸問題は、行政が動けば解決するような簡単な問題ではない。市民が当事者意識を持って取り組むための場作りやスキームを大学が「地の拠点」として講じる。そうした動きが、第三の課題である「地域・コミュニティの活性化」にもつながるという発想だ。地域の活力が減退すれば地域が持つ良さや文化も損なわれてしまう。地元に愛着ある市民が減少すれば、機能面で勝る都市部への人口流出は免れず、街は衰退の一途を辿る。きっかけは一人ひとりの当事活力ある地域を再構築するために村山光博 学長価値創出のドメインを選び教育・研究・社会貢献の3軸から地域課題を解決する長岡大学図 長岡地域<創造人材>養成プログラム全体図諸専門能力の養成(上級情報・専門資格)産業活性化地域・コミュニティ活性化市民協働による社会課題解決地域学修科目の拡大地域学修科目におけるボランティア・スキル、社会人基礎力等の養成学生起業人材の養成(学生起業家)地域活性化の推進(コミュニティ・中山間地活性化)地域との共同研究(個人共同研究含む)市民講座・企業人セミナーの開催(地域づくり・イノベーション人材養成)地域起業人材の養成(女性、シニア起業家等)地域への研究成果の還元(創造人材/人口減少/ボランティア活動/産業競争力研究)地域連携型キャリア教育教 育地域課題対応型連携研究研 究地域活性化・人材育成社会貢献<創造人材>養成で地域に貢献する大学(地域で役に立ち、頼りになる大学)推進・評価体制(PDCA方式)(長岡大学地「知」の拠点整備事業推進協議会・地域課題調整部会)長岡・地域課題(3)地方大学の選択肢
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