カレッジマネジメント228号
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30リクルート カレッジマネジメント228 / May - Jun. 20212019年の学校基本調査(文部科学省)を基にした地元残留率※が21.5%と、18歳人口の県外流出が顕著な岐阜県。そのなかで、法学部、経営学部、保健医療学部、歯学部の4学部5学科を持つ朝日大学は、全学部・学科で募集定員を充足している。1999年ごろから定員割れが続いていた法学部と経営学部をいかにして立て直したのか、また、今後、地方私立大学としてどのような価値創出を目指していくのか、大友克之学長に伺った。「地方私立大学が抱えている課題は、『ブランド力』『就職力』『経営基盤』の3つ。これらをどう成長のエンジンに変えていくかが、学長に就任した2008年以来苦労してきた点です」と大友学長は話す。なかでも最も力を入れてきたのが、就職力の向上、即ち「いかにしてより良い就職を提供していくか」だったという。「岐阜県は商業教育が盛んな土地柄。商業高校を筆頭に実業高校が生徒に様々な実践力をつけ、地元企業に就職させています。そのなかで、いかにして県民の皆さまに大学に進学する意義を理解していただくか。その方法の1つとして、学生の個性や力量と、企業が必要とする人材のニーズを見極め、大学が適切に介入してマッチングを行うことで学生の就職率を徹底的に上げていこうと決めました」。国家試験受験資格取得のためのカリキュラムが厳格に決められている保健医療学部、歯学部と異なり、法学部や経営学部は、学修成果が見えづらい。それは、学生と企業とのマッチングを進めていくうえでも障壁になる。そこでまず取り組んだのが、地元企業との連携だった。大垣共立銀行、十六銀行、西濃運輸、濃飛倉庫運輸等と連携協定を結び、寄付講座の提供やインターンシップ受け入れ等の協力を得た。「企業との連携において、学生が学びを深めていくには企業から寄付講座を出して頂くのが一番です。学生はより実務に近い学びを深められますし、企業も、受講した学生が、将来、自社やグループ企業、あるいは、取引先企業、メインバンク等に就職してくれることが期待できる。例えば、濃飛倉庫運輸さんには通関士資格取得のための全15回の講座を提供頂いていますが、学生が寄付講座を通じて通関士資格を取得し、濃飛倉庫運輸さんに就職するというのが理想型と考えました」。年1回、企業のトップと大学の執行部とで連携協議会を開き、講座内容の検証や今後の人材育成の方向性等に関する議論、受講生の就職先の確認等を行い、「昨年より今年、今年より来年、と講座の質を上げていった」という。「企業は大学とwin-winの関係を築けているかどうかを中長期的な目線でシビアに見ていますから、我々もできる限りの数字を提供しながら、学生の4年間の学びの質をいかに上げていくかに力を入れてきました」と大友学長は話す。加えて、経営学部においては、2012年より、正規のカリキュラムの外に体育会系部活動の形で「会計研究部」を設け、無料の公認会計士養成講座を開設。毎週金・土曜日に中央大学経理研究所で指導実績のある会計士を招聘し、受講者には、机が1人1台備わり、現役公認会計士が常駐している「部室」を提供し、学内で自学自習ができる環境を整えた。結果、講座開設から9年で47名が公認会計士試験に合格。2021年は現役学生7名、卒業生2名が合格した。地元企業と連携し、授業の質向上就職力向上に取り組む公認会計士と地方公務員試験対策を強化大友克之 学長資格と企業連携で文系学部の学修成果を可視化。地域特性・ニーズに合わせた人材育成朝日大学(3)地方大学の選択肢

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