カレッジマネジメント228号
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31リクルート カレッジマネジメント228 / May - Jun. 2021「当時、商業高校等を卒業して公認会計士を目指す生徒は、関東・関西の大学に進学して学ぶ流れがあったところにリーマンショックが起こり、県外進学に困難をきたす家庭の生徒が名古屋の会計専門学校に流れていっていた状況がありました。そこで、本学に学びの場を作ろうと検討を始め、県内の商業高校校長会で計画を話したところ、『4年制大学で学士を取り公認会計士試験に合格できるならそれに越したことはない』と賛同。県出身の子ども達が岐阜で学び、公認会計士まで取れることは、県内の商業高校の先生方の自信にもなっているようです」。経営学部の取り組みに刺激を受け、法学部でも、岐阜県弁護士会との連携協定の締結や、地方公務員試験対策に注力。21年春は、37名が公務員試験に合格し、卒業していった。「法学部の先生方も、県弁護士会の実務家の先生や企業の採用担当の方々と接するなかで、本学の学生がどういう企業・組織に求められているのかということを少しずつ理解してくださるようになった」と大友学長は振り返る。こうした取り組みの結果、経営学部、法学部は定員割れを脱することができた。「取り組みがそう大きく間違っていなかったと感じています。特に、会計教育が良い切り口として機能しており、これまで関東や関西の大学を選択肢に考えてきた生徒が『朝日大学に行けば公認会計士試験に受かる』というイメージを持つようになってきていることを実感しています」と大友学長。一方で、「18歳人口の減少や都市と地方の格差拡大、地元残留率の低さという状況を考えると、今後10〜20年はさらにシビアな状況となるでしょう」と、地方大学の将来には厳しい目を向ける。この状況をふまえて、今後強化していくのは、「地域の高校・企業との連携」と「リカレント教育の強化」だという。「岐阜で育った生徒が本学で学び、卒業後も県内で活躍し、家族を大切にしながら豊かに暮らす、そして地域社会をも豊かにするサイクルを目指しています。苦労して子どもを関東・関西へ出しても、戻ってこない。地元で老夫婦は二人暮らし、という労働力提供型の現状を見ていると、豊かさを再定義すべきです。高校や企業との連携をさらに強化し、地域特性を生かした教育を展開することで、ふるさとを大事にする心を育てていきます」。リカレント教育の強化にも既に着手済みだ。「うまく回っている実例として、地銀の大垣共立銀行と展開している医療経営士養成プログラムがあります。地元の医療法人や社会福祉法人の中堅職員を対象とした学び直しです。大学で学んだことは、10年も経てば陳腐化します。現場のニーズを汲み取りつつ、最新の知見を提供して参ります」。地域を支える実学を提供する─その取り組みに今後も注目したい。(文/浅田夕香)高校と企業をつなぎ、地元・岐阜県を支える大学でありたい特集 地方大学の新たな選択肢※自県内(地元)の大学・短期大学入学者のうち自県内(地元)の高校出身の大学・短期大学入学者の割合(浪人含)20052006200720082009201020112012201320142015201620172018201920202000180016001400120010008006004002000(人)図 改革トピックと志願者・入学者の推移岐阜県高等学校商業校長会と商業教育連携・推進に係る協定を締結体育会に会計研究部を創部。高大接続の会計教育を開始公認会計士試験に12名合格岐阜県弁護士会と学術交流協定を締結保健医療学部健康スポーツ科学科開設公認会計士試験に経営学部生2名合格保健医療学部看護学科開設入学者    志願者    入学定員

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