カレッジマネジメント228号
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33リクルート カレッジマネジメント228 / May - Jun. 2021みならず、地域経済・地域社会を支える基盤としても重要な機能を持っている。これらの機能を果たすため、地域社会でどのような人材が必要なのか、地域社会は大学等に何を求めているのか、大学等は地域社会に対してどのような貢献ができるのかについて、恒常的に情報を把握・共有し、地域社会を構成する関係者間で真剣に考えることが必要である。このような営みは容易ではなく、共通的な課題認識の下で、大学等、地方公共団体、産業界等による地域社会の現状・課題の十分な共有や、地域における高等教育の将来像等に関する議論は必ずしも進んでいない。まずは、大学等だけでなく、地方公共団体、産業界等の関係機関が一体となった恒常的な議論の場としてプラットフォームを構築し、エビデンスに基づき現状・課題を把握した上で、高等教育を含む地域のビジョンを共有することから始めることが必要である。プラットフォームの中で、地域社会を構成する関係者が、お互いの現状と課題について把握・理解すること、これまで埋もれていたニーズを知ること、産官学それぞれの役割が明確になることで、それぞれの立場から個別に取り組んでいた地域課題に対して一体的に取り組むことが可能になる。その結果、より大きな効果や新たなチャンスが生まれることが期待され、大学等だけではなく、地方公共団体、産業界等を含めた地域社会にとっても大きな意義を持つ。(大学等にとっての意義)大学等が参画する意義は、地域社会が大学等へ期待することの把握などにより、教育、研究、社会貢献の取り組みに新たなニーズを取り入れ、大学等の機能強化が図られることだ。また、プラットフォームにおいて大学等の取り組みを恒常的に発信し、地域社会との信頼関係を築くことで、大学等が地域になくてはならない存在として認識され、様々な支援やサポートを得ていくことも期待される。(地方公共団体にとっての意義)地方公共団体が参画する意義は、地域の課題解決のために、大学等や産業界等との連携協力を進めるための議論の場として活用できることだ。特に「知と人材の集積拠点」である大学等の潜在能力を活用して、地域課題の解決やSociety 5.0に向けて地域社会をより豊かなものに変えていく好機でもある。また、地域からの人口流出入は、大学進学時と就職時という二つの時点に顕著であり、地域社会全体で地域の大学等の魅力向上と活性化に取り組むことは、若者の地域への定着のみならず、地域社会の維持・発展そのものにつながる。(産業界等にとっての意義)産業界等が参画する意義は、産業界等が自ら直面している課題や将来ビジョン、必要とする人材像等について共有する場であり、大学等との共通認識の下で、インターンシップ、リカレント教育が進展し、産業界等においても必要な人材確保につながることだ。また、産業界等や大学等がそれぞれの強みと特色を把握することで、共同研究・受託研究への発展や、地域産業の活性化につながるとともに、複数の大学等とのネットワーク形成による生産性向上の可能性が広がる。各地域が抱える課題や実情は様々であることから、プラットフォームの体制整備の考え方も多様である。新たにプラットフォームを構築する場合もあるし、大学コンソーシアム等既存のネットワーク体制が整備されている場合は、こうした既存の仕組みを有効に活用することも考えられる。(対象地域の考え方)プラットフォームの目的を達成するために最適な対象地域を考えることが必要である。地域の概念・範囲は多様であり、それぞれに実情が異なる地域課題や変化に対応するためにふさわしい地域の単位(範囲)を関係者間で協議の上、設定することが求められる。その際、都道府県等の行政単位だけではなく生活圏や経済圏といった広域的な観点や、地域の人口構造の変化、産業構造の違い、大学等の地理的な分布や分野・規模等についても留意する必要がある。(2)地域連携プラットフォームの体制整備特集 地方大学の新たな選択肢

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