35リクルート カレッジマネジメント228 / May - Jun. 2021と、あるいは、地域に所在する大学等が集い、その構築に向けた意思疎通を十分に図り、地方公共団体の関与と協力を得ることなどが重要である。いずれにしても、地域経済・地域社会の維持・発展を図るため、お互いの立場を越えて理解し合うことが第一であり、各地域において最適な方法を取り入れることが望まれる。プラットフォームの活動が一時的なもので終わることのないよう、運営体制を整備することが必要である。この際、既存のネットワーク体制の機能を活用することも有効である。運営体制の整備としては、組織の構成と役割を明確にした組織体を設けることが考えられる。特に、実効性を持って安定的に運営するためには、プラットフォームの全体コーディネートを担う「運営事務局」を設置することが望ましく、参画主体が協力し合って事務局機能や人員体制を確保することを期待したい。また、プラットフォームの運営に係る予算等を確保することも重要な課題の一つである。全ての関係者がプラットフォームの意義を共有したうえで、課題解決に向けた取り組みが実践され、地域社会全体の理解と支援を得ていくことが望まれる。なお、予算確保の手段としては、例えば、会費徴収や地方創生推進交付金の活用のほか、地域社会からの寄附、クラウドファンディング型のふるさと納税、企業版ふるさと納税等を活用することも考えられる。プラットフォームの活動を有意義なものにするためには、参画する全ての大学等、地方公共団体、産業界等が、それぞれの立場からの形式的な議論に陥ることがないよう、互いに将来の展望に対して問題意識を持ち、自分事として取り組むことが必要である。まずは実態を把握するという観点から、現状の共有・理解を図るため参画主体が保有する各種データ、エビデンスの資料とともに、将来を予測したシミュレーション資料等に基づき、議論を重ねつつ将来ビジョンや課題解決のための方策を検討することが考えられる。現状の課題共有という点で、例えば、地方公共団体や産業界等が策定している地域社会や地域産業のビジョンについて、地域社会における大学等の役割、地域の人口推移・推計、高校生の大学等進学需要、域内の産業構造や求める人材需要、大学等卒業者の域内就職状況等の各種データや資料等を共有することが考えられる。その上で、プラットフォームの目標・方向性や地域における高等教育のグランドデザインについて議論を進め、地域課題の抽出や高等教育の機能強化に向けて取り組むことになる。例えば、地域課題解決型の人材育成プログラムやリカレント教育の実施、産業振興・イノベーションの創出、大学等進学率を向上する取り組み、若者にとって魅力的な雇用の創出やインターンシップの実施等が考えられる。ガイドラインでは、共有・議論・実行することが考えられる事項を幅広く例示している。各地域において状況が異なり、議論の過程、課題解決に向けた取り組みも多岐にわたることになるが、単なる議論に終わらず、地域全体で共有した課題に対し、それぞれの特色を生かして可能なことから順次実行していくことが望まれる。ガイドラインは、各地域においてプラットフォームの構築を義務付けるものではないが、地域社会の維持・活性化のためには必要なものである。各地域が抱える課題や実情は様々であることから、ガイドラインの内容を一律に機械的に取り入れることは適当ではなく、対象地域の大学等、地方公共団体、産業界等の連携による検討過程において参考として活用いただくことで、地域連携プラットフォームの構築が推進することを期待したい。最後に、ガイドラインに、「地域に貢献し、地域に支持される高等教育へ」という副題を付した。大学等が地域において欠くことのできない重要な存在であるという位置付けを確固たるものとし、地方公共団体や産業界等をはじめとした地域社会が、大学等の教育研究活動そのものを支える存在になることを願うばかりである。おわりに(参考:地域連携プラットフォーム構築に関するホームページ)https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/platform/mext_00994.html(3)地域連携プラットフォームの運営(4)地域連携プラットフォームで共有・議論・実行する事項特集 地方大学の新たな選択肢(4)競争から協働・共創へ
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