カレッジマネジメント228号
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36リクルート カレッジマネジメント228 / May - Jun. 2021長崎県では近年、将来的な県の発展と在り方について議論を行っている。ここでは2つの報告をご紹介したい。2019年10月公表の「長崎県2040年研究会報告」(以下、「2040年研究会報告」)と、2020年12月公表「長崎県総合計画チェンジ&チャレンジ2025」(以下、「総合計画2025」)である。2つの報告に共通する背景として、全国的に進む人口減少や少子高齢化、インフラの老朽化、地域コミュニティーの衰退といった「これまで経験したことのない大きな社会変化」が確実に起こるという事実認知がある。また、長崎県は全国よりも早く2025年に高齢者人口がピークを迎えるため、そうした変化が早く起こる可能性が高い。以上から、過去からの延長線上の議論ではなく、来るべき未来の危機からバックキャスティングの視点で各種課題に対する対策の方向性を検討したものが「2040年研究会報告」であり、定期的に策定する県政運営の指針について令和3~7年度の推進内容をまとめたのが「総合計画2025」である。時系列では「2040年研究会」の議論が先行し、それを並行して視野に入れながら「総合計画2025」の検討を進め、最終的な報告を踏まえて、2040年問題に対応する施策を盛り込んだ。よって、この2つが「中長期的な視野に立った県づくり」を標榜するものと言ってよいだろう。以下、それぞれにおいて、本特集に照らし特筆すべき点を見ておきたい。まず、図表1が県の人口推移と将来推計に関する現状把握である。全国で見ると総人口のピークは2010年の1億2806万人だが、長崎県はそのピークを迎えず、グラフ左端の1990年の156.3万人から右端の2045年の98.2万人へ、右肩下がりの様相を呈する。特に2015年~2040年は県内全ての市町で人口が減少する見込みだ。グラフにはないが、そもそも長崎県の人口ピークは1960年であり、それ以降55年間減少、さらに向こう25年間も減少し続けるということになる。さらに、県としては2025年に老年人口がピークを迎え、2040年には生産年齢人口が5割を切る水準まで落ち込む。人口が潤沢であった頃の人口水準・年齢分布に合わせた県政ではこれからが立ちゆかないであろうことは想像に難くない。打ち手の方向性としては80年間減少が続く人口を何とか回復させつつ若返りを図るか、今後伸びるであろう産業を県の軸に据えるか、あるいはその両方か。即ち、若年層の人口確保、産業構造の再検討等について、早急に手を打たねばならない状況だ。そのうえで、総務省資料等より抜粋加筆した図表2に見るように、2040年にかけて見込まれる技術進展について触れ、今後の社会変化を下支えする基盤技術分野への積極的な取り組みができれば、日本最西端に位置し多くの離島・半島を抱える地理的なギャップをカバーしながら、新たな産業を牽引するチャンスとなる可能性を示唆する。人口減少・高齢化によるインフラや公共交通の縮小によりコミュニティを形成しづらくなれば、遠隔医療等を含めITを活用した新たなスキーム構築を急ぐ必要もある。こうした検討を経て、これまでは造船業を県の主力基幹産業としていたが、それに代わる新たな基幹産業創出の必要性から、AI・IoT・ロボット関連産業の誘致・企業集積、情報通信基盤整備や人材育成を積極的に進めてSociety5.0の実現に取り組むほか、造船・プラントで培われた技術を生かす航空機関「長崎県2040年研究会報告」2040年までに顕在化する課題に対応した方策の提言https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/kenseijoho/kennokeikaku-project/nagasakiken_2040_kenkyukai/地域の現状を冷静に捉え、地域の将来に主体的に向き合う長崎県(4)競争から協働・共創へ

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