カレッジマネジメント228号
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48大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングといった座学にとどまらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索するなか、様々な取り組み事例を積極的に紹介していきたい。今回は、仙台市に隣接する名取市に立地する尚絅学院大学で、学修成果の可視化とキャリア支援について、合田隆史学長にお話を伺った。尚絅学院大学は、2019年度に1学部から3学群5学類へと大きな改組を行った。合田隆史学長はその目標を「ベーシックな体制づくり」とし、「それで問題が解決するということではなく、改組をしたうえで、どういう教育をするのかが問題」と語る。りを目指しています」。「他者と共に生きる」というキリスト教主義の精神を土台として、学生も「地域など自分の周りの役に立ちたい。そのために懸命に自分にできることを探すタイプが多い」と合田学長は見る。打ち出したいもう1点は、「中規模校らしい大学づくり」だ。学生数2000人という小規模校でありながら、人文社会系を中心に理工系、心理・教育系、健康栄養系と幅広い分野をカバーする総合大学的な面もある。「大規模校にはない、きめ細かい少人数教育と同時に、小規模校にはない幅広さも持っており、この規模感を生かして、学生一人ひとりの興味関心、資質適性に応じた学修の個別最適化を目指しています」。現在取り組んでいる改革内容の一つとして、「学修成果の可視化」がある。「2014年に私が学長になって、若手教職員を中心とした将来構想プロジェクトを立ち上げた。そのなかで出てきたのが、2016年度から実施している『SPレーダー』です」。SPレーダー(Student Progressレーダー:学修到達度評価)とは、ディプロマ・ポリシー(DP)に対応する12または13の軸のレーダーチャートを使って、「どういう教育をするのか」の方向性を示すのが、2019年度から6カ年計画で推進中の「第4次中期計画」だ。これからの時代を生き抜く「実力」(陳腐化しない普遍的なスキル《コンピテンシー》、強みとなる専門分野と幅広い視野)を身につけることを謳い、3つのビジョンと19の重点課題を「Mission 19 Goodness~時代を生き抜く力~」の形にまとめている。この改革で打ち出したい「尚絅らしさ」としてはまず、ミッション系スクールとしての伝統・建学の精神が挙げられる。4年制大学としては2003年に女子短大から転じ比較的新しいが、1892(明治25)年に現在の仙台市内で女学会として創設以来、長い歴史がある。「初代校長はアニー・ブゼルという女性宣教師で、開校から20年近く校長を務めました。その教育理念は『教育とは、単に物知りを養成するのではなく、時代の要請に応えることが出来る人物を養成することである』というもので、非常に実践的な教育方針をとってきました。今もその伝統がずっとあって、学生が社会に出て、地域に貢献できる、そういう力をもった人づくリクルート カレッジマネジメント228 / May - Jun. 202131尚絅学院大学学修成果の可視化とキャリア支援で個別最適化を目指す合田隆史 学長レーダーチャートで学修成果を可視化小規模だが総合大学のような学びの広さを

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