カレッジマネジメント228号
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54高等教育への期待と要求が増すに伴い、大学における業務は多種多様化し、それぞれに求められる水準も高まりつつある。多様化し高度化する業務を誰がどう担うか、近年の大学改革における大きなテーマである。中央教育審議会大学分科会が2014年2月に示した「大学のガバナンス改革の推進について(審議まとめ)」では、学長補佐体制の強化として、総括副学長等の設置、IRの充実、全学的な会議体の活用と並んで、「高度専門職の安定的な採用・育成」と「事務職員の高度化による教職協働の実現」を挙げている。そして、高度専門職として、リサーチ・アドミニストレーター(URA)、インスティトゥーショナル・リサーチャー(IRer)、産学官連携コーディネーター、アドミッション・オフィサー、カリキュラム・コーディネーター等の職を例示している。その上で、「これらの職員は、新たな職種となるため、これまでは競争的資金を原資とした任期付き採用となる例が多かった。しかしながら、こうした専門性を持った人材は、社会的要請を踏まえた大学改革の推進力として、執行部を直接支えることが期待され、安定的に採用・育成していくことが重要である」としている。高度専門職の採用・育成と事務職員の高度化による教職協働は、学長のリーダーシップの確立という側面だけで語られるべきものではなく、教育、研究、社会貢献という大学の機能をどう高度化するかという、より大きな文脈の中で考えるべき課題であるが、多様化・高度化する大学の業務の担い手として、高度専門職と事務職員に大きな期待が寄せられていることは確かである。このようななか、高度専門職の一つであるURAに対する関心が高まり、国公私立の枠を超えて導入する大学が増えつつある。URAの活動が外部資金の獲得増につながる等、具体的な成果も現れてきている。その一方で、本格導入開始から今日に至るまでの道程は決して平坦ではなく、試行錯誤が繰り返され、現状においても様々な課題が指摘されている。その歩みを振り返り、現状と課題を確認することは、大学における高度専門職のあり方、さらには高度専門職の配置と事務職員の高度化の関係などを考える上で、多くの示唆を与えてくれるはずである。このような問題意識に基づき、URA制度導入の背景と経緯、今日までの経過、現在の状況、今後の課題について整理した後、これらを通して如何なる示唆が得られるか考えてみたい。我が国のURA制度は、2011年度及び2012年度からそれぞれ3カ年を実施期間とする文部科学省「リサーチ・アドミニストレーター(URA)を育成・確保するシステムの整備」事業を契機として本格的な導入が始まった。2011年7月に示された公募要領では、背景として、研究者に研究活動以外の業務で過度の負担が生じている状況にあるとの認識が示され、研究開発に知見のある人材をURAとして活用・育成するとともに、専門性の高い職種大学を強くする「大学経営改革」URA制度の現状と課題を通して大学における高度専門職について考える吉武博通情報・システム研究機構監事、東京家政学院理事長リクルート カレッジマネジメント228 / May - Jun. 202192高度専門職の採用・育成と事務職員の高度化による教職協働国の政策主導で導入が促進されてきたURA制度

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