カレッジマネジメント228号
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55として定着を図ることをもって、大学等における研究推進体制の充実・強化に資することを目的とする旨が述べられている。そして、URAを「大学等において、研究者と共に(専ら研究を行う職とは別の位置づけとして)研究活動の企画・マネジメント、研究成果活用促進を行う(単に研究に係る行政手続きを行うという意味ではない。)ことにより、研究者の研究活動の活性化や研究開発マネジメントの強化等を支える業務に従事する人材」とした上で、URAの業務の例示として、研究者と共に行う研究プロジェクトの企画、研究計画等に関する関係法令等対応状況の精査、研究プロジェクト案についての提案・交渉、研究プロジェクトの会計・財務・設備管理、研究プロジェクトの進捗管理、特許申請等研究成果のまとめ・活用促進などを挙げている。採択機関は、2011・12年度合わせて15機関となっている。その後、文部科学省は、2013年度からの10カ年を実施期間とする「研究大学強化促進事業」を創設。大学等における研究戦略や知的財産管理等を担う研究マネジメント人材(URAを含む)群の確保・活用や、集中的な研究環境改善を組み合わせた研究力強化の取組を支援し、世界水準の優れた研究活動を行う大学群の増強を目指すとの事業目的に沿って、22機関に対する支援を行っている。両方の事業に採択された7大学を含む合計30機関が国の支援を受け、URAの配置・育成や組織整備に取り組んできたことになる。その内訳は、国立24、私立3、大学共同利用機関法人3となっている。これらの経過から、URAは政策主導で、国立大学を中心に導入が促進されてきたことが分かる。URAは、米国の制度を参考に導入されたといわれている。山野(2016)によると、米国にはResearch Administrator(RA)とResearch Development(RD)という2つの専門職があり、前者の主な役割として、米国国立科学財団(NSF)や米国国立衛生研究所(NIH)などの会計規則に則った予算申請の支援や研究管理の実施、後者の主たる役割として、戦略的なチーム研究の促進、そのための研究資金の獲得、申請書作成などが挙げられている。またRAに関しては1959年に設立のNCURA(National Council of University Research Administrators)、RDに関しては2010年に設立されたNORDP(National Organization of Research Development Professionals)という専門職団体がそれぞれ活動を行っている。その上で、山野(2016)は、米国のRAの役割は、日本の大学では事務部門の職員が担う役割との類似性が高く、日本のURAは、近年、米国の大学で組織の設置や専門職の配置が進むRDと同類の役割を担っているとの見方を示している。日本においてもURAに期待する役割や実際の業務は大学ごとに多様であり、時々の状況に応じて変化してきた面もある。その一方で、文部科学省を中心に、スキル標準の作成や研修・教育プログラムの作成などURAの育成・定着に向けたシステム整備も進められている。東京大学が文部科学省の委託を受けて2014年に作成した「URAスキル標準」では、URAの業務を、「研究戦略推進支援業務」「プレアワード業務」「ポストアワード業務」「関連専門業務」の4つにカテゴリー分けし、それぞれの業務内容を次ページの表の通りまとめている。未来工学研究所「リサーチ・アドミニストレーターの質保証に向けた調査分析(調査報告書)」(2018年3月)によると、URAが「学内唯一の組織として関与」「主として関与」を合わせた比率が高い業務は、外部資金情報収集(76%)、研究力分析(73%)、申請資料作成支援(70%)、研究プロジェクト企画立案支援(68%)などである。このほか、研究プロジェクト企画のための内部折衝や対外折衝、産学連携支援(地域社会連携含む)に対する関与度も高い。また、「学内唯一の組織として関与」と回答した比率が最も高いのは知財関連(32%)である。調査時点は遡るが、三菱総合研究所「リサーチ・アドミニストレーター業務の自立的運営に向けた調査・分析(報告書)」(2016年3月)は、URAを導入したことによる効果として、機関内での交流・情報共有が進展した(87%)、科学リクルート カレッジマネジメント228 / May - Jun. 2021米国におけるRAとRDの2つの専門職認識され始めたURA制度導入の効果

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