カレッジマネジメント228号
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6リクルート カレッジマネジメント228 / May - Jun. 2021――「地方創生に資する魅力ある地方大学の実現に向けた検討会議取りまとめ」が公表された背景にはどのような考えがあったのでしょうか。2015年に私が委員として参加した内閣官房の「まち・ひと・しごと創生会議」の中で、地方大学をなんとか地元の産業界や雇用に結び付いたものできないか、という議論が始まったことが出発点となっています。地方大学が直面している事実をしっかりと見たときの私の第一印象は、大学経営は日本の企業以上に厳しい将来が見えている世界だということです。18歳人口は30年前にピークを迎え、200万人から120万人弱にまで減り、18年後は80万人台になることも分かっています。これほどの状況が見えている一方、大学の数はここ30年で約500校から約280校も増え、3割以上の大学が定員割れの状態となっています。なぜこのようなことが起こっているのか。私は20年前に業績が悪化していたコマツ(株式会社小松製作所)の経営改革を行いました。世界はグローバル化が進む中で、日本の多くの企業で新しい時代に向けた経営改革がなかなか進まず、競争力を失い始めていました。日本の企業経営がなかなか変われなかった理由として「総花主義」「平均点主義」「自前主義」の3つがあると考えています。雇用維持の目的もあって様々な事業に手を出してしまう「総花主義」。それぞれにそこそこの商品ができるが、世界一を目指しているわけではない「平均点主義」。そして自分達の技術だけで完結しようとする「自前主義」。DX社会を迎えて、顧客が求めるものも急速に変わりつつある。価値観もESGやSDGsといった、人と社会そして環境・安全を意識したものとなっている。顧客が変わり、求められる価値が変わっていく時代にあって、日本にとって特色あるビジネスモデルで先行し、技術は世界中から最先端のものを調達するという方法がこれからの必勝法になってきます。20年前にそのことに気がつき、コマツを変えていったわけですが、まず総花主義、平均点主義を捨て、世界で1番か2番になれる可能性のない事業はすべてやめると決め、2万人いた社員全員に希望退職を募りました。そのころ会世の中のニーズに対する焦点を絞った人材育成内閣官房 まち・ひと・しごと創生会議 構成員コマツ(株式会社小松製作所) 顧問坂根正弘氏(1)Interview 地方大学の進化のための新たな視点将来を見据えた「選択と集中」体力があるうちに大きな改革を2020年末、内閣官房「地方創生に資する魅力ある地方大学の実現に向けた検討会議」より「地方創生に資する魅力ある地方大学の実現に向けた検討会議取りまとめ」が公表された。18歳人口の減少、グローバル化、Society5.0時代の到来によって、地方創生への貢献をミッションとする「地方大学」が今後目指すべき方向性をまとめたものだ(「取りまとめ案」詳細はP.12〜)。「選ばれる大学」を目指す大学改革、産官学の連携、ガバナンス改革等が示され、その実現のための国の施策の一つとして地方国立大学の特例的な定員増等についても言及された。この「取りまとめ」が作成された背景とは何か。そしてそこに込められた思いとは?検討会議の座長を務めた坂根正弘氏に伺った。(インタビュー/リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長 小林 浩 )

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