カレッジマネジメント229号
25/62

25リクルート カレッジマネジメント229 / Jul. - Aug. 2021新しい学習指導要領でカリキュラム・マネジメントの中核への位置づけが求められている「総合的な探究の時間」は、既に93%の学校で取組が進み、大短進学率の高い層ほど組織的に取り組んでいる(図表は割愛)。図表9は既に探究に取り組んでいる学校に4つの力を提示し取組による生徒の変化をたずねたものだ。「そう思う・計」の割合で変化(向上)を比較すると「主体性・多様性・協働性」70%、「思考力・判断力・表現力」62%、「学びに向かう姿勢・意欲」58%で、これら3つの力は半数以上で変化(効果)が実感されている。一方「基礎的な学力(知識および技能)」は29%と、探究と基礎的な学力をどうつなげていくかは模索中の学校が多いと思われる。ほかにもフリーコメントからは、学び合いの姿勢や自己肯定感の向上等、様々な生徒の進学・就職を問わず進路に影響を与えると考えられているようだ。●調査を通じて見えたことは大きく2点。まずコロナ禍の影響について、プラス面はICT活用が計画以上に進展したことで、新学習指導要領の全面実施に向けた取組が積極的に進められようとしている。マイナス面は進路指導。高校では影響を最小限に留めるべく優先度高く取り組んだが、縮小を余儀なくされた。“高等教育機関のリアルな学び”を知る機会を逸した今年度の新入生への丁寧なフォロー、現高校2~3年生に向けた情報や経験の提供が重要になるだろう。第2に高大接続改革の流れを受けた入学者選抜改革と新学習指導要領の取組の方向性がつながってきたこと。授業改善、探究を中心に未来社会に向けて高校生に必要な資質・能力をいかに育むかという本質的な改革が進み、変化の兆しが表れている。教育改革の嵐で「変わるべき」と言われ続けてきた高校。掲載できなかったが、「コロナ禍の危機を“機会”として前向きに捉え、試行錯誤から工夫が生まれ、業務の見直しや改革を進めることができた」という声も寄せられた。入学者選抜改革への対応、新学習指導要領への準備に加え、コロナ禍、GIGAスクール構想…と大きな変化を経験した2020年。「変化対応力」が試され、改革推進に苦心惨憺しながらも意志を持って前に進もうとする高校の動きが浮かび上がってきた。高等教育機関側も高校の変化や期待に応え、対応していかなければならない。変化が感じられている。では探究活動は、生徒の進路選択にどのようにつながっているか(図表10)。98%が「進路実現につながる」と感じており、具体的には「前向きな進路選択の態度の醸成につながる」61%、「地域や社会への興味・関心が高まる」60%が拮抗して高く、2大効果といえる。大短進学率別に比較すると特徴が見られ、進学率の高い層では「志望校や志望分野選びにつながる」、70~95%未満の高校で「総合型選抜等、入学者選抜に活用できる」が高く、進路選択への直接の影響が想定されている。70%未満の層では「地域や社会への興味・関心が高まる」が高い。なお、「前向きな進路選択の態度の醸成につながる」は進学率に関係なく6割前後と高く、探究活動を通じて自らの生き方を考えるキャリア教育的な効果は、40%未満40~70%未満70~95%未満95%以上020406080(%)2021年 全体前向きな進路選択の態度の醸成につながる地域や社会への興味・関心が高まる総合型選抜等、入学者選抜に活用できる志望校や志望分野選びにつながるその他進路実現につながると思わない進路実現につながる・計2021年 全体(n=1156)61.260.150.748.62.61.897.9大短 進学率別95%以上(n=192)57.344.852.662.53.61.697.970~95%未満(n=313)63.353.765.859.41.31.398.740~70%未満(n=240)62.565.852.147.12.52.597.540%未満(n=405)60.568.637.534.63.22.097.5※「2021年 全体」の降順ソート※「2021年 全体」より5ポイント以上高い数値を 色で表示図表10 生徒の進路選択に対する「探究活動」の影響(全体/複数回答)大短進学率70%以上の群「志望校や志望分野選びにつながる」探究による向上は「主体性・多様性・協働性」7割、「基礎的な学力」3割進路選択への影響トップは「前向きな進路選択の醸成」と「地域や社会への興味・関心」特集 コロナ×入試改革をどう乗り越えたのか高校・先生の変化対応力

元のページ  ../index.html#25

このブックを見る