26リクルート カレッジマネジメント229 / Jul. - Aug. 2021徳島県の南端、海部郡海陽町にある県立海部高校は、郡内唯一の高校だ。生徒を確保し、質の高い教育を維持・展開するために、町を主体に県の協力も得ながら「高校魅力化プロジェクト」を進めている。その一環として力を入れているのがICT活用だ。県内の高校や大学との遠隔授業の取り組みを中心に、先生方にお聞きした。海部高校が県内の高校や大学との遠隔授業に取り組み始めたのは2015年のこと。県内でも特に少子高齢化が進む地域にあり、将来的に教員不足により開講できない教科・科目が出てくる恐れがあることから、課題が顕在化する前に対策すべく、教育委員会とともにプロジェクトに着手した。同年に文部科学省の「新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業(遠隔教育システムの効果的な活用に関する実証)」を受託。県内の高校や大学、教育委員会等のメンバーからなる実証研究委員会を立ち上げて、遠隔授業の仕組みを構築していった。柱となるのは、県立徳島中央高校の教員による通年の遠隔授業と、徳島文理大学の教授による年3回(うち遠隔授業は2回)の特別講座だ。徳島中央高校との遠隔授業は、現在では学校間を直接つないで行っている。これまでに「数学B」の授業を実施しており、海部高校の生徒は遠隔授業専用の教室にて一人1台のダブレット端末を使って受講。教室にはモニターが2台あり、1台には授業をする教員が、もう1台には教員の手元にある教材や問題が映し出される。授業支援アプリケーション「MetaMoji ClassRoom」に高校現場の今─教育の変化・進化高校における教育については、新たな取り組みが一気に加速したもの、努力の過程にあるもの、まだ課題を残すものと一様ではないが、不透明な状況下においても改革の動きは前に進んでいる。今回、ICTの活用、授業改善、探究の進化に積極的に取り組む3校にその狙いや内容、成果を取材した。高校・先生の変化対応力2左から、海部高校研修情報課長の福田泰斗先生、進路指導主事・進学課長の大西昌文先生、校長・中﨑 誠先生、教頭・井利元裕哉先生、徳島県教育委員会教育創生課指導主事(高校魅力化担当)の藤田康平氏。2004年開校(郡内3校の統廃合により開校)/普通科・情報ビジネス科・数理科学科/生徒数300人(男子166人・女子134人)/進路状況(2021年3月実績)大学94人、短大7人、専門学校(大学校含む)22人、就職27人。海部高等学校(徳島県・県立)高校・大学との遠隔授業で、生徒の学びの機会を確保・発展させる教員不足による教育の機会損失に備え、遠隔授業のシステム構築に着手する県内の高校の教員による遠隔授業を実施。運用のコツは「余計なものは省く」こと事例リポートICT化の進展GIGAスクール構想の前倒しで導入は進むも、コロナ禍前からの取り組みが“質”を左右した1
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