カレッジマネジメント229号
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27リクルート カレッジマネジメント229 / Jul. - Aug. 2021より教員と生徒は容易に画面共有ができるため、「遠隔授業であっても、教室で机間巡視を行うように生徒の学習状況を確認できる」(井利元教頭)という。海部高校の教室には、授業補助者として教員が付く。教員免許保持者であれば教科を問わず授業補助者として認められ、評価にも携わる。「遠隔ではどうしても生徒の意欲や態度が見えにくいので、その評価を授業補助者が補う」(藤田氏)といい、双方の教員は授業前後に密にコミュニケーションをとっている。「生徒たちはICTへの順応性が高く、遠隔授業も最初から違和感なく受けています。課題は教員側でしたが、すぐに慣れて、遠隔でも対面と大差なくスムーズに授業ができています。コツは、使う機器も授業の進め方もできるだけシンプルにすること。試行錯誤するなかで、余計なものは省いてきました」(井利元教頭)将来的な教員不足という課題に加えて、海部高校の周辺には大学等の高等教育機関がなく、研究者による出張講義が容易ではないという課題があった。そこで、遠隔と実地のハイブリッドでやってみようと始めたのが、徳島文理大学の古田昇教授による地理の特別講座だ。一昨年度までは「遠隔による事前指導+実地でのフィールドワーク」という2回構成だったが、昨年度は「遠隔による事後指導」を加え、3回構成で実施した。11月に行われた事前指導では、海校現場を混乱に陥れたコロナ禍に際しても、「即座に授業や課題をオンライン配信し、スムーズに対処できた」(大西先生・福田先生)という。今後は、「先生方に率先して学内外に技術を伝承していただき、海部高校の取り組みを県全体に広げていきたい」と藤田氏。「遠隔授業が当たり前に行われるようになれば、田舎だから不利という制約をとっぱらうことができる。本校にとってもさらなる広がりが生まれてくると期待している」と中㟢校長。今後は県内の高大連携をさらに強化する方向であり、遠隔授業の実証で得られたICT活用のノウハウを県全体に広げていきたい考えだ。その動きに注目が集まりそうだ。(文/笹原風花)陽町の地図や地形図等をモニターに映し出し、地形の特徴等について遠隔で講義。12月には町内を流れる海部川沿いで実際にフィールドワークを行い、1月には再び遠隔でフィールドワークの振り返りを行った。「高校の地理よりも発展的な内容なので、事後学習の機会があったことでやりっ放しにならず、生徒の理解がより深まったようだ」(井利元教頭)と、遠隔授業でのフォローアップの成果も出ている。遠隔授業のほかにも、オンライン英会話や予備校の学習支援プログラム等を取り入れ、ICTを使って学びの機会を広く提供してきた海部高校。教員にも生徒にも、ICTへの心理的・物理的なハードルはほとんどない。学特集 コロナ×入試改革をどう乗り越えたのか実地フィールドワークと事前事後の遠隔授業で、生徒の学びを進化させる徳島文理大学の古田教授の特別講座は遠隔と実地のハイブリッドで実践。写真は、海陽町内で行われたフィールドワークの様子。古田教授の専門は地理学、環境歴史学で、このエリアをフィールドとして研究してきた縁で、海部高校とつながりが生まれた。遠隔で行われた事後指導の様子。自分たちが実際に見て回った場所が地形図ではどのように描かれているのかを確認し、理解を深める。

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