カレッジマネジメント229号
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29リクルート カレッジマネジメント229 / Jul. - Aug. 2021市立札幌藻岩高校は、都市部の進学校ながら、地域連携の探究を進めている。1年次は「社会に目を向ける」として、多様な人と出会って見る・聴く・質問することを体験。2年次は「アイデアを共創する」として、同校のある南区でフィールドワークを行い、課題発見や解決策の提案・実行に挑む。3年次は「未来を描き、行動する」として、未来の社会や自分を見据えてフィールドワークや進路実現に向けた取り組みを。教員はその活動に寄り添うなかで生徒の志向を理解し、知りたいことやすが、我々も『一緒に考えて楽しむ』ようにしています」その学年団の取り組みに、学校改革のプロジェクトチームにいた長井翔先生が着目、全体に広げようと提案した。「未来が見えない時代には『生徒がリアルな体験から実感のこもった問いを見出し、自ら学んでいく』ことが大事。外につながる学びの場を広げていきたかったのです」取り組みを進めていくと、「言われたことをやる」傾向のあった生徒たちが「やりたいこと、やりたくないことを意思表示する」ようになったという。思いをもって行動・発信し、受験等の進路に結実させる生徒も出てきた。長井先生は地域探究を発展させ、「生徒が札幌のまちで24時間自由に学べるようにしたい」という。地元の大学や他の市立高校との連携も推進。「予算や計画の話から入るより、多様な人がまちづくりを議論するような場で出会い、できることから始める」のが理想だと感じている。そうして学んだ生徒の進路は、全国に広がる。だから千葉先生は「全国の進学先でも、実社会で学びながら力を発揮できるステージがあってほしい」と願っている。学びたいことにマッチする団体や人も一緒に探し、進路相談にものる。こうした取り組みの原点は、2018年度より2年次の総合的な学習の時間で地域連携の活動を始めたことだ。千葉建二先生が、同僚と一緒に地域に出て連携先を開拓した。「学校で言われたことだけを学ぶのでなく、『生徒が外に出て多様な生き方や社会の課題を知り、そこからやりたいことを見つけて学ぶ』ようにしたかったのです。生徒が自走し出すと何が起きるかわからない大変さはありま特集 コロナ×入試改革をどう乗り越えたのか探究活動のなかで生徒を理解し、よりよい学びのマッチングも支援計画にのせるのではなく自走する生徒と一緒に考える探究事例札幌藻岩高等学校(北海道・市立)探究のリアルな体験でやりたいことを見出し生徒が自ら学びを深める(文/松井大助)2年次の地域探究に対する意識の変化。初年度は戸惑うも、活動を通して生徒が成長。それを受けて生徒も先生も年々前向きに。4月には「学び」講座も実施。強制的・計画的な学びと共に、自発的・偶発的な学びも大事にしようと投げかけている。「こんなの意味がない」「やらせすぎだ」「生徒の時間を奪うな」批判的・懐疑的「先輩やってないのに」「南区に住んでないし」「勉強させてほしい」突然の地域探究へのギャップタスク・スケジュール管理中心「昨年の生徒の変容は」「生徒にどう関わればいい?」受容・協力的「まあやるもんだろう」「南区にこんな魅力あるんだ」「将来に役立つ!」受容・やりがい・成長実感各教員が自由に考える余白「〇〇してみたら?」「△△もあるよ」という声掛けチャレンジ・伴走自走増(ちょっと暴走も)「こんなプランは?」「今週、地域探究ないんですか?」地域探究への期待・枠をはみ出す学校・教員生徒1年目 2018■生徒・学校はどう変態してきたか?2年目 20193年目 2020例:クラス替え、新型コロナウイルス強制的に受けた体験から、自分なりの気づきを得る学び強制的偶発的計画的自発的例:旅・友達との会話・人との出会い例:英検・漢検、部活動、探究活動例:受験、テスト勉強、宿題自分から突っ込んでいった体験から、自分なりの気づきを得る学び何かを得るために、やらなくてもいいけど、好きでやる学び何かを得るためにいまやらなくてはいけない学びDCAB左から、総合的な探究の時間の主担当・千葉建二先生、前主担当・長井翔先生探究の1コマ。子育て・福祉をテーマに探究した生徒たちがボールプールを体感。創立1972年/普通科(男女)/生徒数872人(男子479人、女子393人)/進路状況(2021年3月実績)大学234人、短大5人、専門学校等20人、就職2人、その他48人高校・先生の変化対応力

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