カレッジマネジメント229号
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32リクルート カレッジマネジメント229 / Jul. - Aug. 2021頭で考える」経験が増えるほか、日常生活の様々なことに関心を向ける姿勢を育み、フィールドワーク等で場合によっては学校外のネットワークができ、成果を他者に分かりやすく説明したりプレゼンテーションする技法や伝え方の思考を深め、自律的な学びのスタンスが涵養される。探究における問い、即ち課題設定で重要なのは「自分の視点」「持論」なので、生徒の数だけ問いが形成され、問いを軸にした個別の学習が進むことが期待される。学びは自分のものであり、社会とつながるためのツールであり、自らを高みに引き上げる装置である。そうした経験を得ることは人生における財産になろうが、ここでは「その結果大学に入れるのか」という切実な問題もある。探究は学びの個別化という側面が強いため、当然それを指導する高校現場にかかる負荷は高い。探究を推進すればするほど、あらゆる方向に生徒の関心に基づく探究が広がっていくので、知識を教えることはもちろん、どう評価するのか、うまくいくようにアドバイスしたりする等、これまでの教科指導以上の役割が期待される。結果、従来の受験指導に割く時間と労力は減少せざるを得ない。2022年度より、「古典探究」「地理探究」「日本史探究」「世界史探究」「理数探究」「理数探究基礎」「総合的な探究の時間」の7つの探究科目が新設される。科目ごとの「探究」も展開されるとなると、科目の先生方は、「大学は従来型の知識を求めるのか、探究を評価するのか」という2つの問いの狭間で板挟みになりかねない。こうした高校の現状とこれからに照らし、「探究の先にスムーズに接続される入試」を設計した事例をご紹介する。入試を変えるだけでなく、まずは大学教育と高校教育、大学入学と進路指導を接続する観点を持っていることに注目されたい。●現在5キャンパスに6つの学群を展開する総合大学●2016年に開始したAO・推薦準備セミナー、翌2017年に開始した高校生応援プロジェクト「じぶん探究プログラム」を2019年より統合した高大接続事業「ディスカバ!」を展開●豊富な高大接続実績から高校との対話を積み重ね、高校教育改革を支援する立場として探究入試を設計●高校生に対し、自らの経験を棚卸して大学教育に向けて翻訳する経験を、入試を通じて提供し、学力や意欲もさることながら、自らの探究を軸にした進学の意思決定を支援することで、入学後のミスマッチを防ぐ●一見同じような道をたどりながらも、少しずつ変容していく螺旋と、高校生自身の試行錯誤のプロセスを重ね合わせ、社会につながる行動様式だと定義●社会での活躍人材を「探究的なスパイラルを多く回転できる人材」と位置づけ、高校時代に探究スパイラルを回した経験とそこから学んだことを大学教育にどう紐づけるかを問う●高校生が入試準備をしやすいよう、また軸を定めてリフレクションを進められるよう、評価基準を公表●大学教育も探究にシフトするよう同時並行で改革中●学内推進のため、既存の旧AO入試に近い設計とし、他の総合型選抜と提出書類を極力揃える等を工夫卒業時に送り出す人材の特徴から社会で活躍するための素養を考察し、翻って高校時代に実践してきてほしい経験を「探究スパイラル」と定義。その回転経験とそこから得た学びを中心に大学へのレディネスを問う。高校の学習指導要領との接続を志向しているように見えて、実は高大社接続を体現している入試でもある。桜美林大学は、2022年度入試より、探究的活動に注力する学生を評価する入試を導入した。桜美林大学 総合型選抜 探究入試Spiral検討経緯注目すべきポイントCase① 入試

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