カレッジマネジメント229号
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33リクルート カレッジマネジメント229 / Jul. - Aug. 2021ここで主に「変化」のターゲットとなるのは第1章で挙げた学習指導要領の改訂である。高校段階での探究は生徒によって問いの深さが異なり、レベル感も様々かもしれない。しかし重要なのはアウトプットの質よりも、問いを軸にした探究プロセスを構築すること自体にある。その過程で生徒は多くのことを学ぶ。では、こうした頭の使い方を知った生徒達が大学に入学してきた時、大学はそれに対応できるだろうか。大教室での一斉授業でこうした思考回路が培われることは想像し難い。探究プロセスに慣れた高校生から見て、果たして貴学の大学教育は魅力的だろうか。否、本来大学教育こそ探究的な学びであるという言もあろう。しかし、その志向性が発揮されるのは2~3年次以降のゼミ活動からというケースは多い。問題は、高校を卒業して入学してくる初年次のタイミングで、探究が継続されるような仕組みがあるのかどうかかもしれない。●建学の精神「学際」「社会に開かれた大学」により、独自の教育システムとして学類・専門学群制を展開●「昨今の複雑化・多様化する社会に対応するには、文理横断的に学問を統合して取り組む必要がある」として総合選抜・総合学域群を設計●総合選抜・一般選抜(前期日程)の定員のうち、約7割を従来の学類・専門学群選抜、3割を総合選抜に設定・学類・専門学群選抜とは、学類ごとに定めるアドミッション・ポリシーに則り、基礎学力を中心に選抜し、入学後は学類に属するもの・総合選抜とは、「文系」「理系Ⅰ」「理系Ⅱ」「理系Ⅲ」という広い区分で選抜し、入学後の学類・専門学群選択の幅を担保するもの●総合学域群・高校までの学びを軸に自分で履修メニューを組み、1年かけて様々な学問的知見を広く学んだ後に学類・専門学群に移行する・選抜区分にとらわれない移行を支援する学修サポートを整備・学類・専門学群選抜の入学者と教育課程に大きな違いはないが、履修に際しては学生自身の主体性と目的意識が必須・学類・専門学群とは別のフレームで、高校3年間+大学4年間で何を自分は探究するのかという観点を見定め、必要な能力を培う。何を目指すかをまず決めてから進路を選ぶという風潮に一石を投じる設計高校の探究テーマを大学の専門という器に合わせて押し込めるのではなく、その軸足で多様な学問に触れる中で新たな問いを見出す可能性に期待する。高校時代に培った経験を大学にどうフィットさせるかを1年間模索することができる仕組みである。筑波大学は2021年4月から総合選抜合格者向けに総合学域群をスタートさせた。総合選抜で入学した1年次生のためだけに用意された特別な「学びの場」である。筑波大学 総合選抜・総合学域群検討経緯注目すべきポイント人文・文化学群人文学類 比較文化学類 日本語・日本文化学類総合学域群総合選抜入試の分類入学者選抜入学後の所属1年次 2年次以降~ 前期日程一般選抜文系理系Ⅰ理系Ⅱ理系Ⅲ社会・国際学群社会学類 国際総合学類人間学群教育学類 心理学類 障害科学類生命環境学群生物学類 生物資源学類 地球学郡理工学群数学類 物理学類 化学類 応用理工学類 工学システム学類 社会工学類情報学群情報科学類 情報メディア創成学類 知識情報・図書館学類医学群医学類 看護学類 医療科学類芸術専門学群※体育専門学群を除くCase② 教育特集 コロナ×入試改革をどう乗り越えたのか大学の変化対応力高校の変化への対応(教育面)22

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