カレッジマネジメント229号
35/62

35リクルート カレッジマネジメント229 / Jul. - Aug. 2021大学教育に大きな影響を与えるものの1つに、社会があることに異論はないだろう。学生が卒業後に所属する社会には、産業や個々の企業、地域、国やグローバル等、多様な切り口が存在する。社会の変化として現在大きいのは、世界的に見たSociety5.0とグローバル化、日本の地域であれば少子高齢化や過疎化があろう。現在は新型コロナウイルス感染拡大に伴うICT活用の進展、感染関連のデータサイエンスの必要性、科学エビデンスを取り入れた政治の必要性等、新たな変化がもたらされている。こうした社会の変化に大学教育はどう対応すべきだろうか。●1924年国際的仏教学者の高楠順次郎氏により開設した武蔵野女子学院を起源とし、1950年女子短大設立、1965年四大化、2004年に共学化。1990年代以降の活発な新増設・改組で知られ、今や2キャンパスに12学部を擁する総合大学●仏教による人格教育「四弘誓願」を建学の精神とし、ブランドステートメント『世界の幸せをカタチにする。』を2016年から標榜●社会ニーズを的確に捉える理事会のもと、既存の大学教育への挑戦とも取れる多様な打ち手を展開●2024年に迎える100周年に向けて、「武蔵野大学2050VISION」を策定し、2050年に生きる学生に必要な素養を身につけるための学部学科や共通教育改革に着手●データサイエンス学部の設置(2019年)・講義なし・テストなしという方針で、課題プロジェクトに挑むなかで教員とディスカッションしながら学ぶスタイル・プロジェクト型学習を基軸に、少人数で企業との共同研究や、実社会の課題について実践的に学ぶ「未来創造プロジェクト」等、初年次段階から具体的なソリューションに携わる機会を多く配し、その後の原理的な学修に移行しやすくするカリキュラム設計・Musashino University Smart Intelligence Center(MUSIC)を拠点にAI教育を全学展開し、AI-Ready-Universityを目指す●アントレプレナーシップ学部の設置(2021年)・不安、不満、不足など、世界に溢れる「不」を解決するため、「高い志と倫理観に基づき、失敗を恐れずに踏み出し、新たな価値を見出し、創造していくマインド」を身につける。大学のブランドステートメントを体現する学部でもある・ヤフー株式会社の企業内大学Zアカデミア学長として、次世代リーダー育成を行っている伊藤羊一氏を学部長に迎えた・「マインド」「事業推進スキル」「実践」の3つのフレームでカリキュラムを設計。「マインド」「スキル」を実践しながら鍛え、その繰り返しで学生を成長させることをカリキュラムの主眼に置き、「学生の志を中心に置いて、社会に対して新たな価値を創造する実践的な能力を身に付けるアプローチ」と称する●武蔵野INITIALの導入(2021年度)・Society5.0の先にある社会を生き抜くタフな学生をどう育てるかという命題に全学で応えるため、またブランドステートメント『世界の幸せをカタチにする。』を実現するために必要な素養を全学共通基盤の枠組みで体系化・共通教育の前身『武蔵野BASIS』で培った遺産は継承しつつ、AI、データサイエンス、SDGsを新たなコンテンツとして追加・「武蔵野大学2050VISION」で掲げるHappiness Creatorとしての志を立てるのに必要となる資質・能力の養成を基礎教育が全学的に担う仕立て改革の背景には全体を貫くブランドステートメントと、その実現のための「2050VISION」があり、未来社会とマーケットに向けた冷静な視点がある。常に社会を見ながらマーケットニーズを見据えた勝ち筋を描き、それが大学の独自性に昇華されるようにコンセプトをつむぐ。それを非連続的な速度でつなぎ、相乗的な改革効果を創出するのが武蔵野大学の改革である。武蔵野大学は近年、2050年の未来に向け、ブランドステートメントを軸にした大学改革を加速している。武蔵野大学 2050年の未来に向けた大学改革検討経緯注目すべきポイントCase③ 社会特集 コロナ×入試改革をどう乗り越えたのか大学の変化対応力社会の変化への対応3

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る