カレッジマネジメント229号
36/62

36リクルート カレッジマネジメント229 / Jul. - Aug. 2021また、第2章までで見てきた「高校の変化」は、これから変化していく社会を意識して作られたものである。文部科学省の「高等学校学習指導要領(平成30 年告示)解説」総則編には、冒頭の「第1章 総説 第1節 改訂の経緯及び基本方針」に、以下の文章がある。今の子供たちやこれから誕生する子供たちが、成人して社会で活躍する頃には、我が国は厳しい挑戦の時代を迎えていると予想される。生産年齢人口の減少、グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により、社会構造や雇用環境は大きく、また急速に変化しており、予測が困難な時代となっている。また、急激な少子高齢化が進む中で成熟社会を迎えた我が国にあっては、一人一人が持続可能な社会の担い手として、その多様性を原動力とし、質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出していくことが期待される。こうした変化の一つとして、進化した人工知能(AI)が様々な判断を行ったり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されるIoTが広がったりするなど、Society5.0とも呼ばれる新たな時代の到来が、社会や生活を大きく変えていくとの予測もなされている。また、情報化やグローバル化が進展する社会においては、多様な事象が複雑さを増し、変化の先行きを見通すことが一層難しくなってきている。そうした予測困難な時代を迎える中で、選挙権年齢が引き下げられ、更に平成34(2022)年度からは成年年齢が18歳へと引き下げられることに伴い、高校生にとって政治や社会は一層身近なものとなるとともに、自ら考え、積極的に国家や社会の形成に参画する環境が整いつつある。このような時代にあって、学校教育には、子供たちが様々な変化に積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決していくことや、様々な情報を見極め、知識の概念的な理解を実現し、情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと、複雑な状況変化の中で目的を再構築することができ●2004年の国立大学法人化以降、2008年の学域学類制の導入、知識集約型社会で活躍する中核リーダーの人材像を示す「金沢大学〈グローバル〉スタンダード(KUGS)」の策定をはじめ、社会や時代のニーズを踏まえた多彩な教育改革を推進●社会変革が加速する中、日本の国際競争力低下に歯止めをかけ、イノベーションの創成をリードする人材を育成するため、既存の3学域17学類に加え、2021年に融合学域先導学類を新設●社会の実情と未来を見据え、既存学問を超越するフラッグシップとして構想●実践を重視し、現状を打破する「突破力」と周囲を巻き込む「人間力」を涵養●地域・社会・世界でのフィールドワークを通して、様々な社会的課題から自らが追究したい課題を設定。その「自分の問い」を軸に、課題解決に必要な学知を学ぶオーダーメイドの履修計画を設計●イノベーションに求められるのは、多分野にわたる専門知識。3つのコアエリア×2つの探求エリアを往還する中で、自ら設定した課題に応じた基礎科目から学び始め、幅広い分野の専門知識を総動員して課題解決に近づく学びを深める、「バックキャスティング学修」が学びのコンセプト●他者と共創し、新たな価値を創造する力を高めるため、多様なバックグラウンドを持つ人材の協働と、実践知を積む体系的なアントレプレナーシップ教育を重視 社会の変化やパラダイムシフトに目を向け、社会変革を先導できるリーダーを、既存の枠組みを超えて育成する未来志向型教育。そこには社会動向への冷静な視点と、より良い社会構築への熱い想いがある。だからこそ、これからの社会を担う若者に求められる資質・能力をきちんと育みたいという次世代に向けたベクトルが、構想の基盤となっている。金沢大学では社会変革を先導できるリーダーの育成に向け、文理融合の新たな学びが始動した。金沢大学 融合学域先導学類検討経緯注目すべきポイントCase③ 社会

元のページ  ../index.html#36

このブックを見る