カレッジマネジメント229号
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37リクルート カレッジマネジメント229 / Jul. - Aug. 2021るようにすることが求められている。ここで示されるように、高校の学習指導要領改訂は「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創る」という軸で社会と連携し、社会に必要な資質・能力を育もうとするものだ。そこには2つの観点がある。まず、変化が激しく複雑化する社会で活躍するために育成すべき資質能力。そして、社会と接続した学び方に変容する必要があるという、学び方の変化だ。こうした教育が先行導入の2019年度から足掛け3年目に入り、2022年度からは1年次から順番に年次導入、そして2024年度からは全学年のカリキュラムがこの指導要領の内容に沿ったものとなる。加速度的に変わりつつある社会。高校がそうした社会を見据えた教育に変わっていく中で、大学はどうだろうか。社会の様々な変化のうちどれを捉え、事実をどう集めて分析し、課題にどうアプローチし、どういう人材を育成するのか。そのために学部を作るのか、全学教育を変えるのか、学び方を変えるのか、大学のビジョンを見直すのか。どのようなストーリーを描くかはケースバイケースである。繰り返すが、第1~3章は、流れのなかでどこを取り上げるかの違いである。高校と大学と社会をどうつなげるのか。そのためにどこから取り組むのか。切り込み方が大学で違うだけで、どの事例も全ての領域を何らか意識して設計されていることにお気づきであろうか。貴学はどこから始めるのか、その参考になれば幸いである。・社会を前向きに変えるチェンジ・メーカーを育てる、ソーシャルシステムデザイン学部同学科の単科大学・県立広島大学は従来の「地域に根差した人材育成」を継続・強化し、一方で「地域に根差してグローバルに突き抜ける人材育成を展開」するのが叡啓大学というすみ分け・2014年から広島県が推進する「学びの変革」を背景に、高等教育段階における「新たな教育モデル」を体現する大学として誕生:知識伝達型授業によるインプット中心の学びから、横断・探究・体験を軸に、主体的・対話的で深い学びを軸とするアウトプット中心の学びへ、能動的な学びへとシフトすることを目的にし、初等教育から高等教育までをつなぐ次世代教育のバリューチェーンの一角を担う・ソーシャルシステムデザインを学部レベルで学ぶ全国的にも稀有な教育。「つながりで価値を生み出す力」=イノベーション創出力を養成する・全学的にアクティブラーニングを採用し、豊富な協働と実践でコンピテンシーを育成・イノベーションを牽引するリーダーを育成するために身につけるべき能力は、「実践力」「国際教養力」「グローカルな視点」と定義。それぞれに沿った学びを「修得×実践」というコンセプトで設計。軸になるのは学生一人ひとりの「問い」。「問い」の解決に必要な知識・スキルを自ら選び構成するオーダーメイドカリキュラム・卒業単位124のうち62単位を英語で修めることが卒業条件であり、全単位英語での履修も可能。教育との整合性を図るべく、入試段階ではCEFR B1レベルを出願要件として課した・課題解決に必要なツールとして「ICT・データサイエンス」と「思考系」の科目群を用意し、次世代に必要なICTと「システム思考」「デザイン思考」「論理的思考」を学ぶ・2年次から本格的に体験・実践プログラムや課題解決演習(PBL)、インターンシップや留学で豊富なフィールドワークを経験する・多様化・複雑化する課題を解決するうえで基盤となる知識・スキルの修得を目的としたリベラルアーツ科目群で、SDGsを意識した国際教養力を身につける・自律的な学修を伴走支援するため、コーチング制度、学生の居場所を作るポート(港)制度等を整備・4人に1人は留学生というグローバルキャンパスで、国際学生寮での生活も含めてグローカルな視点を身につけるチェンジ・メーカーに必要な資質・能力の育成に特化した学びで、多角的にグローバル・コンピテンシーを涵養する。公立ならではの地元自治体・産業界とのネットワークも背景に、広島県が踏み出す新たな一歩に注目したい。2021年4月、広島県公立大学法人が設置する2校目の大学として誕生。叡啓大学検討経緯注目すべきポイントCase③ 社会特集 コロナ×入試改革をどう乗り越えたのか大学の変化対応力

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