41リクルート カレッジマネジメント229 / Jul. - Aug. 2021みや特色を生かし、具体的かつ明確に設定する必要がある。Ⅱ 授業科目・教育課程の編成・実施各学位プログラムにおいては、ディプロマ・ポリシーに定められた学修目標を達成し、卒業生に最低限備わっているべき能力を学生に身に付けさせるため、明確な到達目標を備えた個々の授業科目が学位プログラムを支える構造となるよう、体系的・組織的に教育課程を編成する必要がある。そのためには、例えば「カリキュラムマップ」の作成等を通じた授業科目の過不足の検証や、「カリキュラムツリー」の作成等を通じた授業科目相互の関係性の検証等が必要となる。さらに、密度の濃い主体的な学修を可能とする前提として、授業科目の精選・統合のみならず、学生が一つの学期において同時に履修する授業科目数の絞り込みが求められる。また、各授業科目とディプロマ・ポリシーとの関係を教員・学生双方が十分に理解するため、シラバスには各授業科目の到達目標のほか、客観的な成績評価基準等の内容を適切に盛り込む必要がある。Ⅲ 学修成果・教育成果の把握・可視化学修者本位の教育の観点からは、一人ひとりの学生が自らの学修成果を自覚し、エビデンスと共に説明できるようにすることが、学修成果等の把握・可視化の第一の目的と考えられる。さらに、大学が自らの教育を改善する上で前提となる現状を認識することも、学修成果等の把握・可視化の目的の一つと考えられる。また、大学の学びの中心は授業科目の履修となるため成績評価を厳格に行うことは、学修成果・教育成果を把握・可視化する上で重要であり、大学教育の質保証の根幹にも関わるものとなる。Ⅳ 教学マネジメントを支える基盤ディプロマ・ポリシーに定められた学修目標を踏まえ、学修者本位の教育を提供するために必要な望ましい教職員像を定義したうえで、教職員に対し適切かつ最適なファカルティ・ディベロップメント(FD)※1・スタッフ・ディベロップメント(SD)※2を実施することが必要としている。また、教学に関する情報の調査分析を実施する機能である教学IRを教学マネジメントの基礎となる情報収集基盤と捉えた上で、学内での理解や制度整備・人材育成を促進する必要がある。「授業科目」レベル「学位プログラム」レベル「大学全体」レベルシラバス、カリキュラムマップ、カリキュラムツリー、ナンバリング、キャップ制、週複数回授業、アクティブ・ラーニング、主専攻・副専攻ルーブリック、GPA、学修ポートフォリオ積極的な説明責任社会からの信頼と支援図1 「教学マネジメント指針」概要教学マネジメントとは教学マネジメント指針とは学長のリーダーシップの下、学位プログラム毎に、以下のような教学マネジメントを確立することが求められる。○ 大学がその教育目的を達成するために行う管理運営であり、大学の内部質保証の確立にも密接に関わる重要な営みである。○ その確立に当たっては、教育活動に用いることができる学内の資源(人員や施設等)や学生の時間は有限であるという視点や、学修者本位の教育の実現のためには大学の時間構造を「供給者目線」から「学修者目線」へ転換するという視点が特に重視される。○ 学修者本位の教育の実現を図るための教育改善に取り組みつつ、社会に対する説明責任を果たしていく大学運営すなわち教学マネジメントがシステムとして確立した大学運営の在り方を示す。○ ただし、教学マネジメントは、各大学が自らの理念を踏まえ、その責任でそれぞれの実情に応じて構築すべきものであり、本指針は「マニュアル」ではない。○ 教育改善の取組が十分な成果に結びついていない大学等に対し、質保証の観点から確実に実施されることが必要と考えられる取組等を分かりやすく示し、その取組を促進することを主眼に置く。○ 本指針を参照することが最も強く望まれるのは、学長・副学長や学部長等である。また、実際に教育等に携わる教職員のほか、学生や学費負担者、入学希望者をはじめ、地域社会や産業界といった大学に関わる関係者にも理解されるよう作成されている。Ⅱ 授業科目・教育課程の編成・実施✓明確な到達目標を有する個々の授業科目が学位プログラムを支える構造となるよう、体系的・組織的に教育課程を編成✓授業科目の過不足、各授業科目の相互関係、履修順序や履修要件について検証が必要✓密度の濃い主体的な学修を可能とする前提として、授業科目の精選・統合のみならず、同時に履修する授業科目数の絞り込みが求められる✓学生・教員の共通理解の基盤や成績評価の基点として、シラバスには適切な項目を盛り込む必要Ⅲ 学修成果・教育成果の把握・可視化✓一人一人の学生が自らの学修成果を自覚し、エビデンスと共に説明できるようにするとともに、DPの見直しを含む教育改善にもつなげてゆくため、複数の情報を組み合わせて多元的に学修成果・教育成果を把握・可視化✓大学教育の質保証の根幹、学修成果・教育成果の把握・可視化の前提として成績評価の信頼性を確保Ⅴ 情報公表✓各大学が学修者本位の観点から教育を充実する上で、学修成果・教育成果を自発的・積極的に公表していくことが必要✓地域社会や産業界、大学進学者といった社会からの評価を通じた大学教育の質の向上を図る上でも情報公表は重要✓積極的な説明責任を果たすことで、社会からの信頼と支援を得るという好循環の形成が求められるⅠ 「三つの方針」を通じた学修目標の具体化✓学生の学修目標及び卒業生に最低限備わっている能力の保証として機能するよう、DPを具体的かつ明確に設定✓DPに沿った学修者本位の教育を提供するために必要な望ましい教職員像を定義✓対象者の役職・経験に応じた適切かつ最適なFD・SDを、教育改善活動としても位置付け、組織的かつ体系的に実施✓教学マネジメントの基礎となる情報収集基盤である教学IRの学内理解や、必要な制度整備・人材育成を促進教学マネジメントを支える基盤(FD・SD、教学IR)Ⅳ三つの方針「卒業認定・学位授与の方針」(DP)、「教育課程編成・実施の方針」(CP)、「入学者受入れの方針」(AP)教学マネジメントの確立に当たって最も重要なものであり、学修者本位の教育の質の向上を図るための出発点予測困難な時代を生き抜く自律的な学修者を育成するためには、学修者本位の教育への転換が必要。そのためには、教育組織としての大学が教学マネジメントという考え方を重視していく必要。Ⅰ~Ⅴの取組を、大学全体、学位プログラム、授業科目のそれぞれのレベルで実施しつつ、全体として整合性を確保。学位プログラム共通の考え方や尺度(アセスメントプラン)に則り、大学教育の成果を点検・評価項目の例は別途整理
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