カレッジマネジメント229号
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42リクルート カレッジマネジメント229 / Jul. - Aug. 2021これらのFD・SDや教学IRは、教学マネジメントの一環として実際に教育活動を改善していくという側面も有する重要な活動と理解される必要がある。Ⅴ 情報公表各大学が学修者本位の観点から教育を充実する上で、学修成果・教育成果の自発的・積極的な公表も必要であり、公表された情報に対し、地域社会や産業界、大学進学者といった社会が評価を行い、それを契機として大学自身が教育を見直すことで、大学教育の質の向上を図っていくことが期待される。教学マネジメントは、各大学が自らの理念を踏まえ、その責任において、本来持っている組織としての力を十分発揮しつつ、それぞれの実情に合致した形で構築すべきものである。そのため、本指針は大きな方向性を示すものであり、そのまま従う「マニュアル」であることは意図していない。内部質保証というと、設置認可後の認証評価等に関連する各大学の大学評価委員会等が行う業務という感覚がまだまだ現場にはあり、実際の教育の改善からは切り離されて理解される傾向があるのではないかと考えられる。しかし、教学マネジメントとは、学生の学修がしっかりと行われているかを、大学自らが、点検・評価をし、絶えず改善・向上に取り組むことによって、大学教育の質保証を大学の責任において実施することであり、教務・教学の関係部署の方も、内部質保証の取組として、本指針をベースに取り組まなければならないという認識をしていただく必要がある。どこから手をつけてよいかという質問が大学関係者から多く寄せられるが、まずは、図1(「教学マネジメント指針」概要)でも示したとおり、「三つの方針」のさらなる明確化が非常に重要になる。今後は大学においても、「どのような人材養成を行い、どのように社会貢献していくのか」をステイクホルダーに発信するために、「どのような基準を満たしている学生を卒業させるか」及び「どのようなカリキュラムポリシーでその目的が実現されるか」等を積極的に公表する必要がある。その上で、実際に学生が上記で示した能力や資質をしっかりと身に付けているかを客観的に示すことが重要である。教学マネジメント指針においても、学修成果・把握可視化の章で示しているが、例えば、アセスメントテストの結果、卒業論文・卒業研究の水準、学外試験のスコア等(図2情報公表について)によって卒業生の学修成果を測定することが有効と考えられる。その他、大学に入学した後の学修成果、すなわち成長度合いを様々な教学データを活用し示すことが必要となっ教学マネジメントと内部質保証について学修成果の把握・可視化と情報公表について図2 情報公表について○各授業科目における到達目標の達成状況○学位の取得状況○学生の成長実感・満足度○進路の決定状況等の卒業後の状況(進学率や就職率等)○修業年限期間内に卒業する学生の割合、留年率、中途退学率○学修時間○「卒業認定・学位授与の方針」に定められた特定の資質・能力の修得状況を直接的に評価することができる授業科目における到達目標の達成状況○卒業論文・卒業研究の水準○アセスメントテストの結果○語学力検定等の学外試験のスコア○資格取得や受賞、表彰歴等の状況○卒業生に対する評価○卒業生からの評価○GPAの活用状況○カリキュラムマップ、カリキュラムツリー等の活用状況○ナンバリングの実施状況○教員の業績評価の状況○教学IRの整備状況○入学者選抜の状況○教員一人あたりの学生数○学事暦の柔軟化の状況○履修単位の登録上限設定の状況○授業の方法や内容・授業計画(シラバスの内容)○早期卒業や大学院への飛び入学の状況○FD・SDの実施状況(1)『卒業認定・学位授与の方針』に定められた学修目標の達成状況を明らかにするための学修成果・教育成果に関する情報の例(2)学修成果・教育成果を保証する条件に関する情報の例②教学マネジメントを確立する上で各大学の判断の下で収集することが想定される情報①大学の教育活動に伴う基本的な情報であって全ての大学において収集可能と考えられるもの

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